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最初の『不思議な人だな』が『変な人だな』にランクダウンした瞬間でもあった。
兎も角、それ以降も現在に至るまで謎の友好関係は続いている。
瞬に釣られて和輝も名前で呼んでいるが、優弥も特に嫌がる様子は無いのでこれで良いのだろう。上下関係にも無頓着らしい。
今ではすっかり同い年のように馴染んでいる。
仲の良くなった今でこそ思うのだが、優弥は怠惰で友情を続けている気もする。
要するに、来る者拒まず、去る者追わず、だ。
優弥は飲み干したのだろうパックを口元から離し、組んだ足に手を乗せて切れ長の目を瞬に向けた。
「で……寝坊するまで夜更かしして、今度は何企んでたんだ」
いつもの眠いがモロに出た低音が、瞬に問いかけた。
男性にしては長めの黒髪が揺れうごく。
夏なのに暑くないのかな。と感じたことは何度かあった。
「あぁー! そうそ……何で判ったんだよ!」
驚く瞬をよそに優弥はパックを潰しながら口の先だけ動かす。
「前の女の子見過ぎ」
ドキッ、と瞬と同時に一つ先の机に座った小柄な女子の身体が跳ね上がった気がした。
瞬の目が見開かれたのは見間違いではなかったと思う。
「携帯見過ぎ。怪し過ぎ」
何故か慌てて携帯を隠す瞬の態度を見るに、前の席に座る女子が関係している、というところまで正解のようだ。
小柄な女子は慌てた様子で携帯の画面を指で突いている。
瞬は瞬で携帯をハーフパンツのポケットに突っ込んでしまったから、何か送られていたとしても気付いていないだろう。
「鋭いな優弥……」
思わず心の言葉がそのまま出てしまった和輝に、優弥はわずかに顔を上げてボソリと告げた。
「……鎌掛けただけだ」
然程興味無さそうに、クシャクシャになったコンビニ袋の中に空になったパンの袋とパックを詰め込む。
言葉を失った和輝と瞬をよそに、優弥は大欠伸で返答を待っている。
凄いな、とは言い辛かった。
代わりに。
「あ、そう……」
と和輝の口から生温い返しが出る。
ほんの少し、新たな彼の意地悪さを見た気がした。
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