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「何だよつれねぇな優弥ちゃん。え、何、鮭要る?」
瞬は優弥の方に向き直ると、自分のトレイの上から鮭の切り身を一摘み箸に取り、彼の口元へと向ける。
何かがこちらに向けられたのを横目に見たのだろう優弥は、ストローに口を付けたまま小さな鮭を二度見し、即座に「ジュースと合うか!」と低い声で唸ってパックを一気にへこませた。
前々から思っていたのだが、この
出会いの切っ掛けは失くした瞬の学生証を偶然、優弥が拾って届けたことだ。
やけに長身でスラリとした男が近づいて来るかと思えば、虚ろな目で「
あの時は二人共疑問符を浮かべるばかりで立ち去る後ろ姿を見つめることしかできなかった。
何と言うか、時たま誰も想定しないような言動を繰り出すのだ。
その時のことを訊ねてみても覚えてないというし(寝ぼけて頭が回ってなかった、とあとで聞いた)。
結局その後、お礼を言いに行くついでに瞬に懐かれることになるのだが、面倒臭そうな態度とは裏腹に何だかんだ拒否するような態度は見せない。
だからと言って一つ上の年齢に、しかも初めて会った翌日からここまで馴れ馴れしく出来ているのは瞬の一種の才能だと思う。
というか、それを考えると優弥の瞬に対する扱いは妥当と思わざるを得ない。
優弥も優弥で天性のラフさが備わっているらしく、その翌日に瞬が学校終わりに優弥の家に押しかけた時もすんなりと家に上げてそのまま二人で酔い潰れていたことがある。
一番遅い和輝の講義が終わって家に向かった時には、二人共机に突っ伏していた。
それからは爆睡している瞬の隣で延々と優弥の愚痴を聞く作業だ。
あの講師がどうだとか、あっちの学部にすれば良かったとか、ついには何でバイトを掛け持ちしてまで大学に通ってるんだとか、少なくとも五回以上は繰り返し聞いた気がする。
転がる空き缶を見つめて話半分で相槌を打っていたら、いつの間にか優弥も眠りに落ちていた。
気付いたら太陽も真上に輝く時刻。
休校であった事に感謝しながら、雑魚寝している二人が目覚めるのをずっと待っていた。
恐らく、この人に対する印象は付き合いの有る無しで大きく変わるだろう。
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