第25話 プラナハカタル04
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始まりの町から旅立ち、7日が過ぎていた。
人里離れた草原で、俺は膝をつく。仰ぎ見た空には星が輝いていた。
『
「……そんなはずはない……俺は……プラナの
俺がこの世界がゲームではないと気づいたのは、最近の事だった。
正確には水辺の迷宮で、配信を終えた後である。きっかけは、コメント欄の違和感だった。そこでは、3年前に発生した魔獣災害が、初めて発生したかのように騒ぎ立てられていた。
考えもしないではないか。
このゲームが、実在する別世界であり、
過去と接続してるなんて。
「この世界でトルネンブラッドは討伐したはずだ! そうすれば、俺がガキの頃にやらかした間違いも、全部、全部、消えるはずだった!!」
少し強引だったが、
結果、プラナの活躍により、トルネンブラッドは討伐された。
迷宮に潜り、黒幕である教団も捕縛して牢獄に放り込んである。死者も出さず、完璧にやり遂げた。
だから、殺せる手段は限られている。
例えば、死者蘇生の代償によるキャラロスト。
12歳の頃、里帰りした離島で体験した厄災。赤い霧が渦巻く地獄で、俺はヒーローだった。
あの日、雨の中で灰になって消えるプラナを目撃するまでは。
『君が存在するせいだ。因果の逆転は不可能だからな』
声が聞こえる。
「……黙れ」
『
「黙れ黙れ黙れええええぇぇ!!」
『
「違う…俺は、頑張ったんだ…俺なりに一生懸命考えて……」
『まだ間に合うぞ。解放するのだ。君は既に手にしているだろう? くだらぬ世界の法則など無視する一振りを』
「まだ……間に合う?」
『そうだ。共に因果の逆転……禁忌を犯そう。その犠牲の先にこそ、
長い沈黙が続いた。冷たい夜風が頬を撫で、暗雲が星々を覆い隠していく。
なぁ、そうだな。
俺は
「魔王兵装、
脈動するように蠢く、漆黒の糸で紡がれた異質な剣だった。
「
世界が闇に染められていく。
「……
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私は自身の
あの子がログアウトしても違和感を抱かぬよう、緊急処置として作られた箱庭は、とても限定的です。
病室と、自宅や別荘。それらを行き来する道なりしか存在しません。ただ、それだけで
「いつまで、そうしているつもりですか?」
私は作られた病室で、抜け殻に寄り添う
「……語が生きてる限り、看病をやめるつもりはないわ」
栞が看病しているのは、私が3年前に保護した肉体です。語と呼ばれるそれは、
語という肉体の牢獄に囚われ、我が子は常に苦しんでいました。だからこそ、私は星の盟約に背いてでも、保護する必要があったのです。
だが、もう分からなくなってしまいました。この女から
「それは生命活動をしていますが、空っぽです。そこに、あの子はいません」
「それでも……ごめんなさい。私の我が儘に付き合わせてしまって。でも、私は諦めきれない」
「いえ、いいのです」
価値観が違うのでしょう。死の概念が異なるのです。
「天本 栞、貴女も自身の身体を労りなさい。私は貴女の中に、
この女が見せる何気ない言動が、
「……貴女こそが、真の母だったのです」
この7日で思い知りました。
私が無駄だと判断した肉体を保護し、看病を続けた栞こそが、母として正しい振る舞いだったのです。
栞が止めなければ、私は肉体を処分していたでしょう。今なら分かります。理屈ではなく、処分の判断を、後悔していたと。
「いいえ、あなたも母親だわ。向こうの世界で、語をずっと守ってくれたのでしょう?」
「……ちが、私は、貴方に嫉妬して…
苦しげに言葉を吐き出す私を、栞が抱擁しました。
「ありがとう。語を守ってくれて」
その行動が、言葉が、どうしても
「
そう、地球は既に滅びが始まっています。
私はすでにその存在を補足していました。かつて、私が宿っていた星を滅ぼしかけた厄災。
「……トルネンノイト。なぜ、この地球に」
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その日の朝、僕は正座させられていた。
「なんでスープに、先生肉を混入してるんですか!?」
「……うぅ…だって、僕のお肉のが、1番だって……えっぐ、証明じだぐで……」
「泣くほど!? どんな心理ですか!? やっぱり私、人間の心を理解できないですよ!」
うさぎ肉と僕のお肉でスープを作り、クズハの反応を伺っていたら、混入がバレてしまった。
何故バレてしまったのだろう。
「あんな露骨にどっちのお肉が美味しいでショーを開催されたら、嫌でも分かりますよ! AとBの肉並べて、味の感想求めちゃダメでしょ!」
「分かりました。次は上手くやります」
「そう言う話じゃないんですよ! 先生肉は確かにそこら辺の肉より美味しいですけど、倫理観が崩壊してるんですって! ああああ、もう! なんで、嬉しそうな顔してるんでか!?」
やった! 僕の勝利だ!!
ウザキ肉さん、君は確かに強かった。命を賭したお肉は強敵だった。しかし、友達を想う熱い気持ちと、気絶寸前の失血、規格外の魔力が勝利を手繰り寄せたのだ。
「そんな事よりクズハさん」
「そんな事!? さっきまで泣くぐらい執着してたのに、そんな事なんですか!?」
僕の1番が確定したので、目的は達成された。もうこだわる必要もないので、任務について話し合わないといけない。
『日本にトルネンノイトが出現しました。サブクエスト:【トルネンノイトの討伐】が受託可能となりました』
早朝にこの通知が届き、僕はこの
「ああ、これですか。私にも届いてますけど、どうします?」
「『
殆どの聖女兵装を失った僕は、日本に渡る術を持たない。そして、討伐も現実的ではなかった。
「転移装置なら町に緊急用に標準設置されてますよ。始まりの町だと領主の館ですね。で、何を悩んでるんですか?」
「……だって、討伐も…確実じゃないし……それに……」
あの日本エリアに行くと、いつも悲しい思いをする。今の生活が楽しすぎて、躊躇してしまう。
「……先生、行きましょう」
クズハが僕の両肩を強く掴んで目を合わせる。
「悩んでるなら行くべきです。私ならそうします」
「でも、あそこに行くと…僕、
「どっちも先生なんだから、関係ないでしょ」
「どっちも……僕?」
「先生の説明を聞いて、私はそう判断しました」
僕は今まで、
この問題は、難解で複雑でいつも考えるのを後回しにしてきた。
「母さんに、どう接すればいいのか、分からないですし」
「先生のやりたいように甘えればいいんですよ」
「いいんですか。そんな適当で」
「いいんですよ。適当で」
いいんだ。
なら、適当にやろうか。
なにせ、これはゲームなんだから。
「よーし、先生もその気になりましたね! へへへへへ、ニホンには金の匂いがするんですよねぇ。さあ、領主の館にレッツゴー!!」
元気に拳を突き上げるクズハが輝いて見えた。
「ありがとう、クズハさん」
一緒にいると楽しくて、知らない世界を見せてくれて、美味しい大切な友達。
「僕は
言葉にする事で、2つの存在が重なった気がした。
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20240817
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