第24話 プラナハカタル03
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その日の朝。
朝食のパンを頬張るクズハを眺めていると、ピタリと食事の手が止まる。
「先生、この挟んでいるお肉なんですけど」
「はい、美味しいですか?」
「美味いですよ。ただ、出所が知りたくて。起きたら謎肉が調理されてたら、気になりますよ」
なるほど。肉の製造元が知りたいと。
「安心して下さい。ちゃんと僕の魔力で作りました」
「あれ? この前パンしか作れないと、言ってませんでした?」
「頑張りました。こうやって僕の血を魔力で練り込んで…」
小型ナイフを取り出し、実践して見せる。手首の動脈を掻っ切り、滴り落ちる血液を魔力でこねくり回して肉を錬成する。
「お肉の完成です」
「ウミガメのスープううううぅぅぅ!!」
この世界にもあるんだ。ウミガメのスープの話し。無人島に漂流した二人が食べていたスープが、実は亡くなった他の人たちの肉だった話。怖いよね。
「なんで朝食の度に、水平思考クイズやらされるんですか! 料理を自己流でアレンジするメシマズが可愛く見えますよ! もう、パンだけでいいですって!」
綺麗に完食した皿を叩いて、抗議する僕の友達が理解できない。
「魔力で作ったパンと、なんの違いがあるんですか?」
「そこに血液がブレンドされると、狂気的になるんですよ! ちくしょう、何で不思議そうな顔するですか。絶対私が言ってる事、伝わってませんよね?」
だって、魔法の触媒としては魔力も血液も似たような物だし。マジで違いが分からない。
クズハはしばらく頭を抱えて考え込み、やがて静かに席を立つ。
「このままだと、今後何を食わされるか分かったもんじゃありません。先生に食事のなんたるかを教えます。森を散策しますよ」
どうやら食事について、教えてくれるらしい。
でも、森は魔獣も出て危険なんだよね。
「じゃあ、クズハさん。コレあげます」
僕は聖女兵装の『
「こ、これは……私の可愛いあんよに穴を開ける教材っ……」
「この聖女兵装ですが、本来は人に向けるものではありません。弱い魔力障壁なら貫通できる立派な武器です。僕が手本を見せるので構えて下さい」
僕はもう一丁の星屑を取り出して外に標準を合わせる。クズハも僕に習い、ワナワナと震える手で、星屑を構える。
うん、様になってる。飲み込みも早いし、この兵装に適性があるのかもしれない。
「あそこに木が見えますか? あれに向かって撃ちます」
僕が手本に1発撃ち込むと、遠目にでも見えるほど大きな風穴を開ける。
「へへへへへ、なるほど。これは、クズハちゃんの覚醒シーン。力の一端を受け継いだ私が無双するヤツだ。この教材で、私をバカにするクソどもを教育できちゃうんですね!」
クズハは目を輝かせながら引き金を引く。
「ぐっきゃんっ!」
発砲の反動で、クズハは奇声を発しながら後ろに吹き飛んだ。
「ぎゃあああぁぁ! 私の手がああ! 小さくて可愛い私のお手てがあああぁぁ!」
指があらぬ方向に曲がっていたので、治癒魔法をかて複雑骨折を治しておく。
「クズハさんの防御力より、兵装の威力が勝っているようです。魔力量が増えれば扱えるようになりますよ」
「くっ、いきなり借り物の力を得る、楽々なパターンじゃなかったか。まあ、後々に使えるなら貰っておきます」
クズハは悔しそうに
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森を散策する事、数時間。
「これが今日のお肉です」
クズハが捕まえて来たのは、ウサギによく似た動物だった。血抜きため逆さに吊るされ、ピクピクと痙攣している。
「か、可哀想…癒さないと」
今ならまだ、傷を治して元通りにできる。
「ダメです。私に捕まるぐらいマヌケなんですから。癒して森に放っても、他の動物に美味しく連れて行かれますよ」
オロオロしているうちに、ウサギは動かなくなってしまった。死んじゃった。僕が、見殺しにしてしまった。
クズハが呆然とする僕の両肩を強く掴んで、目を合わせる。
「先生、食事をしますよ」
「まさか、この子を食べるんですか? お肉なら僕がいくらでも作れて…」
「お肉はこうやって手に入れるんです! 普通、リストカットでお肉は湧いて出てこねぇんですよ! 食事の常識を改めましょうよ!!」
それからクズハは食事について熱弁した。
なかなか納得しない僕を、根気強く説得し、殺めたウサギの解体作業を手伝わされた。
そうして、夕ご飯が完成した。
僕の目の前にはパンと、ウサギ肉のスープが置かれていた。
「いただきます」
自然と口をついて出た言葉。きっと僕は初めて本当の意味で、この言葉を使ったのかもしれない。
お肉を口に放り込む。
クズハさんが岩塩と山菜で味付したお肉は、とても美味しかった。
いつもなら現実の事を考え、食べない僕だけど。このお肉は、全部食べないといけない。そう思った。
「ご馳走様でした」
調子に乗って3杯もおかわりしてしまった。初めて満腹になったお腹をさすり、不思議な充足感に満たされる。
「先生、食事よかったでしょ?」
食器を片付け終えたクズハがドヤ顔で聞いてくる。
「はい、何となく分かった気がします。ただ…なんだか……眠くて」
知らずとあくびが出てしまう。
「ああ、腹一杯食べると眠くなりますよね。夜も遅いし眠ったらどうですか」
「ん、クズハさん……隣」
隣を叩いて示すと、クズハは「しょうがないですねぇ」と添い寝してくれた。
心地よい花の香りに包まれ、僕は眠りに落ちていった。
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翌朝。かつてない絶好調で目が覚めた。
食事と睡眠の合わせ技は、最強である。
このゲームには謎の仕様が、いくつも存在している。食事と睡眠も
分かりやすくNPCが寝たり食べたりしてたのに、ムダなことしてると、スルーしていた自分がバカみたいだ。
「クズハさん、ありがとう」
隣で大の字を書いて眠るクズハに、感謝を伝える。
僕も負けてられない。
テンション爆上がりで、小型ナイフを抜き放つ。果実を手際よく収穫し、
気分上々で手首を切りつけ、溢れ出した血液で肉を錬成していく。
「ウサギ肉さん…尊い命を犠牲に、たくさん学ぶ事ができました。でも、初めての友達の1番は、僕じゃないと……」
僕のお肉が1番、美味しいですよね?
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