第3話 見えない解答
2月の寒空の中、紅白戦が始まった。紅組の監督は吉本で、白組の監督はヘッドコーチの真原庄司だった。佐藤は紅組だった。チームには、エースの高本久がいた。ストレートを内外角低めに射抜くように投げ込み、スライダーで翻弄する、その投球スタイルは佐藤とは真逆だった。ただ、佐藤はどこか惹かれていた。エースという物はこういうものかと。激情を出す事もなく、淡々と投げこむ。そして、当然のように勝ちを重ねる。大日と、高本の投球はピッタリ合致していた。今日は初回を投げ、1人のランナーも出さなかった。やはり当然だった。ベンチに高本が戻ってきた。そして、佐藤の隣に座った。なぜ、自分の隣に?疑問符が浮かんだ。「ノブ」低いバリトンが聞こえる。高本の声だった。なぜ、自分を呼ぶのか。「今日は投げるんだろ?」佐藤は無言で頷いた。低いバリトンは続く。「ノブはいいよな。俺が持ってないもんを持ってる」そう言ったきり、高本は静かになった。嫌味でも、取り繕った嘘でもなかった。高本さんにはなくて、俺にあるもの…その言葉が宙に漂うまま、佐藤は思考を巡らせた。ただ
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