第12話

 

「熱、光、音、電気エネルギーやらを含めての雷なんだよね」


 まあそうですよね、そう考えると雷って発電とかに使えないのかな? とか思考が流れていきそうになるのを、押し留めて羽田さんの話に耳を傾ける。


「完全にコントロールし、任意のエネルギーに変換するのを成功したのは今のところ一人しか知らないね」


「えっとその一人とは?」


「雨雲カイリ」


 彼は天を指さして雲をかき混ぜるようにクルクルと指を回した。


「ああ〜」


 納得の声が自身の喉から漏れる。


雨雲あまぐもカイリ』


 ゼウスのゴフテッドであり、『雷鳴ライブ』と呼ばれる、ゴフトを活かしたパフォーマンスで半年前くらいからテレビに引っ張りだこな若手男性アイドルだ。



「あっ! ていうことは、もしかして雨雲カイリと会ったことがあるんですか?」


「いや残念ながらないね、別の支部の人から話を聞いたくらいかな」


 羽田さんは肩をすくめて答えた。なんだ芸能人に会えるかと思ったけれども残念だ。


どうやら雨雲カイリが、神話を参考にして自力で雷鳴だけ、雷光だけ、とエネルギー変換を完璧にできるようになったらしい。


 それをGCO側が聞いたので、ほかのゼウスのゴフテッドに対して同じようなことができる人が居るかもしれないと思い、もちろんカイリの許可を取って講習を受けるゼウスっ子たちにその解釈を広めているらしい。


 ただ残念なことに、まだカイリと同様に完璧にコントロールをできる人はいないようだ。


「まあ出来る人がいないから、代わりに自分の中で5段階くらいでレベル分けをしておくことをみんなには教えている」


「そうなんですね」


 最初の段階分けの話へと戻ってきたわけだが、なんだか思ったより捻りがない。


「でも、神話を理解することは非常に大切だ。そこで! イザナミノミコトについて調べてきたんだけど、国海さんの場合は8段階で制御しようと思う!」


「えっ5では……なぜ8段階なんですか?」


「知ってるかな? 八雷神やくさのいかづちのかみ


 あッ! 予習したやつだと目を見開く。そんな私に羽田さんは頷きで返した。


「知ってるみたいだね、簡単にいえば死んでしまい、腐ったイザナミノミコトの体の部位から生まれた神々だ」


「確か手とかお腹とかですよね」



 そう確かそのうちの一つが陰部なんだよな、羽田さん相手に全部言えとか言われたらキツい。

 イザナミはヒノカグツチを出産したときに火傷してそれがきっかけで死んでしまったからなあ。



「うんうん……で、次回までの宿題! 八雷神を調べて、それらを1から8まで君の中で順位付けてきてね、理由もつけて」


 一番弱いものから一番強いものまで。今後よく使うのは一番弱いものである、とのこと。

 人を痛めつけない解釈を考えついたなら、もちろん教えてほしいとも言われた。



「最終的には8段階にするっていうのを考えて、今日はひたすら、ゴフトに慣れる練習をしよう」



 その後私はたくさんの雷を出してみた。出力を小さく小さくしようとしても、難しい。


 やりすぎると気持ち悪くなった。うっ、と胸元を抑える私に対して羽田さんはよくあるのか心配しつつ、休憩をすすめてくる。


「これが限界ってやつですか?」


「そうだね、無尽蔵にゴフトを使えたらそれこそ神になっちゃうからね。焦らずやっていこう」




 ゴフトを使いすぎてか、その日の夜は疲労感で重い身体では宿題も後回しですぐに寝てしまった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る