第8話
「うん……うんうん、まさに神の雷だね。僕は何人かゼウスのゴフテッドを見たことはあるけれど、君のは桁違いだよ」
測定結果、どうやら1億ボルト出たようだ。感情の振れ幅でもしかするともっと出る可能性もあるそうだ。
ただ大切なのは電流、アンペアの方だと言いながら確認したところ……「40キロアンペアだッ!うわ‼︎」と若干引いた口調で言われたがよくわからない。
メモを取りながらペンを持った手で羽田さんは顎を撫でた。
「ううん、ちょっと詳しくないからたぶんなんだけど……天然の雷並みだね」
「ええっ?! 超危険じゃないですかッ‼︎」
「まあ、非常に危険だね! んーゴフテッド相手だったら即死ってわけではない……と思う。ゴフテッドになると身体能力も飛躍的に上昇するんだよ」
非常に危険という評価をいただいてしまい、とても物騒な体になってしまったものだと思う。
あと、私も身体能力上がっているのか。だから体力テストが良かったのかと納得する。
「本当はゴフトの研修は座学と平行しての予定だったけれど……まず君は人を殺さないための力加減の練習をする方が重要みたいだ」
なんだその台詞。まるで私が人間と仲良くなりたい化け物みたいじゃないか。
まあそうといえばそうか、ゴフトをもらったから社会一般に見て私はかなり危険な存在なのかもしれない。
こほん、と彼は咳払いをした。
「ではこれからしばらくは研修期間となります」
「はい、よろしくお願いします」
「テストの結果、僕の判断ではまず最優先にゴフトの調整から入ったほうが良さそうなので、しばらく出勤場所は支部だけど、出勤後にこの運動場に移動してゴフトの指導を受けてもらう予定だよ」
「わかりました」
「結果は上に上げて、今後何かあったら連絡するよ」
「はい、頑張ります!」
羽田さんはいい人とはいえ、殊勝な心意気を見せるためハキハキと挨拶しておこう。
その後、来た道を戻り支部へと戻って時計を見ると午後5時ごろになっていた。
そして今日はこれで終わりなので帰ってよいと言われた。緊張した初出勤日が終わり、私はまだまだ住み慣れない我が家に帰るのだった。
△△△
翌日
今日から研修期間と聞かされて指定された時間に出勤すれば、1階ロビーに
「おはようございます」
「おはようございます。では調査課の部屋まで行きましょう!」
彼とともにエレベーターへ向かう途中、
そういえば確かに昨日はする間もなく、テストを受けさせられていたので挨拶はしていない。
いつかそのうち挨拶することになるだろうと思っていたが、それが今日とは考えていなかった。エレベーター内で私の掌は汗が滲んで湿っていた。
「どうぞ」
そう促され、は既に羽田さんが乗ったエレベーターへ乗る。
「改めて……これから
「はい! 国海チカです。こちらこそよろしくお願いします」
羽田アマトさん……と名前を心の中で咀嚼し復唱する。
名前を覚えるのが苦手なのでこれから起こるだろう挨拶ラッシュも正直気が進まない。進まなくてもしなければいけないからするが。
気づけばエレベーターは5階に着いて、また羽田がボタンを押しており、私は遠慮がちに感謝を伝えながらエレベーターを降りた。
私は下っ端なのに羽田さんボタンを押す係さをさせてしまったことに申し訳なくなる。少しだが、鼓動の高鳴りを感じる。
『調査課』と書かれた扉を押し開けて中へ入る彼の後ろに続く。
部屋の大きさは意外とコンパクトで、デスクがいくつか置かれており、電話をしている人やパソコンを打っている人がいる。
私はキョロキョロとあたりを見渡したり、こちらを見てくるがまだ挨拶のタイミングではかない雰囲気の人に対してぺこぺこと頭を下げたりしていると、羽田さんは奥の方にある扉の前で立ち止まった。
コンコンとノックして、
「支部長、入ってもよろしいでしょうか?」
羽田さんが尋ねると扉の向こうから、「どうぞ」と短く許可の声が聞こえた。
入っていく彼に遅れないようについていくと、中には見覚えのある男性が座っていた。
その人は以前私を勧誘した人だった。思わず目を見開いて顔を注視してしまった。
「国海さん、こちらが対策局本部の金蚕支部の支部長である金手さんです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます