第7話
「はい、じゃあまず入社テストをします。試験監督でもある
にこにこと愛想良く挨拶してくれた黒髪短髪好青年の羽田さん。
私もそれに対して名前と今日から入社なのでよろしくお願いしますという旨の挨拶を返す。
……非常に気になる発言があった為私の心の中は結構あたふたしている。
「あの、何もせずにすぐ入社って言われませんでした? 気のせいですかね、今入社試験って言われた気がするんですけれど」
「ああ! ごめんごめん! 支部長の説明不足かもしれないなあ。
入社は確定なので安心して。結果は問わず君の能力はどのぐらいなのかを検査……テストするよっていう話」
「そ、そうなんですね。安心しました」
いやいやいや驚かせないでほしい。焦っていた心を返してくれ。
「今日やるのは主に3つ、筆記テスト、体力テスト、ゴフトテストだ」
「ゴフトテスト、ですか?」
意外とがっつりテストされることに萎える。最後のゴフトテストなんか、これは全くの謎である。
どのようなものをするのか全くわからない。羽田さんはその質問を待ってた、慣れてますとでもいうように口角を上げて答えた。
「ゴフトは人によって違うけど、どんな能力なのか? どの程度の能力があるのかを見るんだよ」
「なるほど」
「国海さんの場合は、まあ雷と事前に聞いているけどね、実際に確認することは何においても必要だよ」
「ごもっともですね」
羽田さんに案内されて最初に筆記テストを行うための部屋へと向かう。
羽田さんは20代後半のように見えて、スーツ姿が妙に似合う、ザ公務員という出で立ちだ。
身長は……何cmかわからないが180cmはなさそうに思えるので175cmくらいかな?そんなことをエレベーターに乗っているときに考えていた。
5階まで移動し、ごくごく普通の会議室に通されて、私一人と監督官の羽田さんが椅子に座っている空間で30分程度掛かるテストを受けた。
困ったな全然最近勉強していない! 頑張れ私の地頭!
まあ結果としては半分以上の点は行ったんじゃないかって感じ。内容は国語、数学、英語などの一般教養のテストだった。
そして次は体力テスト行うらしいが、今いる金蚕支部ではなく、別の場所にある運動場とやらで行うとのこと。
支部から運動場に向かうための車に乗ると言われて慌てて荷物をまとめていると、ユニホームを渡された。
手渡されたその服は、テレビでたまに見るGCOの制服だった。長袖のジャンパーに長ズボンで、色は紺色、白と赤の二つのラインが入っているのが特徴的だ。
運動場へ来たここは支部から車で20分ほど離れている運動場である。
小学校が2つくらい入りそうな広大な運動場の端っこに休憩所として大き目の一戸建てくらいの大きさの簡素な建物がある。
その中は1階のほとんどが体育館のような板張りのトレーニングルームになっている。
2階が更衣室やシャワー室、給湯室などがまとまって存在していた。そこの女性更衣室を貸してもらい着替えたら、早速体力テストを受けた。
体力テストの結果は予想以上に良かった‼︎‼︎
おかしいな、高校時代はもっとだめだめだったから、数年運動してなかったから更にだめと思っていたのに。まあ結果が良ければよし。
「よし、じゃあちょっと移動しようか」
そう言われて無駄に広い運動場の中を二人移動する。
事前に問診をされていたので自分の能力と思われるものを伝えておいたし、道中でも世間話として聞かれたので答えておいた、私のゴフト、イザナミの力をテストする。
私はなにやら大がかりな全体的に黒い機械のところまで案内された。その機械は雷を受け止めて測定するものだと説明がされる。
「ちょっと待ってて」
「はい」
洗濯機を1ダース並べたくらいの大きな機械の端っこを操作し始めた羽田さんは、ポチポチといくつかボタンを押すと私へ向き直った。
「よし準備できたよ」
「ありがとうございます、ええとどうすればいいですか」
機械をなにやらいじって設定が終わったようなのはわかるが、私はこれに雷を当てればいいのか? 説明をしてほしい。
「自分で雷を生み出すことはできるかな? これから説明するからよく聞いてね、雷を測定する受電体があそこにある」
「えっと、あれですか?」
真ん中あたりの一部、シリコンのように素材感が変わっている部分を指せば、そこで合っていたようで「そう」と頷かれる。
「あそこに合図をしたら雷を落としてみてね。あっ聞き忘れてたけど理性薬は飲んできてるよね?」
「はっ、はい! 飲んできました」
彼は、それなら安心だと微笑むと、私と機械から20メートルくらい距離を取った。
「いいよー!」
合図が来たので、やらねばならない。ちらっと後ろを見ると羽田さんはどうぞ、と手で勧めてくる。そんな様子に私は戸惑う。
まだまだ使い慣れていない、ほとんど使ったことがないのにここで使っていいものなのか。羽田さんを危険に晒してしまうのではないかと
私は俯いて唇を噛む。そんな私を見て彼は優しく且つ離れた私に聞こえるよう大声で言った。
「大丈夫だよ、ゴフテッド自体頑丈だし、ここは特殊な施設だから近隣住民もいないし安心してー!」
その言葉を聞いて、私は覚悟を決めた。
深呼吸をしてゆっくりと目を瞑って集中する。灰色の網膜に下から上へと一本の光が伸びていくような感覚だ。
ドンッ!!!!
音と共に、視界が真っ白に染まった。熱風が顔に当たる。
目を開くと機会が反応し、うるさく内部の何かが稼働しているような音がし始めた。後ろを振り返って見ると、羽田さんは唖然とした表情で立っていた。
瞼越しに見た白さがおそらく私が放った雷だったのだ。見るには目を開くのが遅かったが、確実に人に当たったら死に至らしめそうではあると他人事のように感じた。
私は羽田さんに駆け寄ると、ハッとした様子でこちらを見た羽田さんの顔には汗が滲んでいた。
「うん……うんうん、まさに神の雷だね。僕は何人かゼウスのゴフテッドを見たことはあるけれど、君のは桁違いだよ」
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