第6話

 私は暫くは暴発の恐れもあるため、GCO所有の宿舎へお世話になることになった。


 しかしいきなりすぐにそこへ向かうこともできず、一度自分の家に荷物を取りに帰った。


 ただ、帰る前には、GGOによる健康診断と精密検査を受け、薬を飲まされた。その上で局員の同伴出なければ帰れなかった。


 落ち着いたらまた、荷物をまとめに来られるとの話を聞いて、私は必要な物資を手に取って、宿舎へと進む車に揺られるのであった。



 唯一の救いは、宿舎が新しくて綺麗なことだ。3年前に急遽建てられたと聞いたが、賃料は格安らしい。


 また、転職を決めた私は今の会社を辞めることになった。GCOの方から会社には事情を伝えておくと言われてはいたが、私からも辞職届けを出した。


 クソみたいな会社だから転職してやるとずっと思ってはいたが、惰性で働き続けていたのでラッキーと思いつつも、突然のことすぎて喜ぶこともできないしGCOで幸せにお仕事を出来るかと言われると不安しかない。これからどうなってしまうのだろうか。


 そして……例の彼氏にも連絡をしておいた。電話とかはなくもうメッセージだけで「私たち別れましょう」という旨のメッセージを送って一方的にブロックした。いやでもブロックしたはしたけれども、示談とかあったのかもしれないと不安になった。


 かといってアイツに連絡は取りたくないしで、GCOに念のため確認しようということに私の中で決定された。


 どう伝えようか? シミュレーションしてみようかな。


『すみません私の元彼氏についての話なんですけれど、何か裁判とか事情聴取とかで話したりとかすることってありますか? というのも別れてほしいということをメッセージを送ってブロックしてしまったのですが何か対話する必要があるのでしょうか?』


 いやこれはなんか人間としてだめだな。とりあえず自分の口を信じて掛けよう。



……プルルルル

「はい、ゴフテッド対策局金蚕支部です」


 氏名と経緯を話して事情を察してもらってから本題へと移る。


「間に挟んでしまうようで申し訳ないのですが、私の彼氏だった人、松葉ヒロキについてのお話しなのですが………


トラブルになるのを避けるためにもそちらから彼に今後私に接触や関わらないようにお伝えすることって可能でしょうか?」


「そうですね、……すぐにはお答えできないため確認をしてから再度折り返し致します」


 そう通話が終了し30分後に電話がかかってきた。


「国海さんのお電話でよろしいでしょうか?」


「はい」


「彼氏さんの件なんですけれど……確認しましたところ対応可能でした。


 やはり男女間のトラブルということで不安かと思いますのでこちらから接触等はしてほしくないという旨お伝えしておきますね。

 何かあった場合は再度ご連絡をいたします」


「あッはいありがとうございます」


 よかったとほっと胸をなでおろした。警察は民事不介入と有名だが、こういった場合に私が彼氏とコンタクトを取ることによって再度暴走が起こる可能性も考慮して対応してもらえるらしい。


 ゴフテッド証明として免許証にゴフト所持という記載が追記された。


 あとは検査や診察を受けて薬を処方される。結構有名な薬で……正式名称は長くて忘れてしまったが一般的に『理性薬』と呼ばれるソレは飲むことで、感情の振れ幅を必要最低限抑えるという効能がある。


 その効能ゆえに結構物議を醸しているものでもあるのだが、まあ今はどうでもいいか。


 今飲んでみてのあまり変わりはなく、30分経つとなんとなく頭が軽い感じがした。


 ただ大きな変化があるわけではない。こんなものなのだろうか。


 あの時の沸騰した頭に水をかけられたような変化はないため、元々血が昇っている状態でなければ劇的変化は感じることができなあのかもしれない。


 色々と準備をしていよいよ入社日になった。今の家も引き払いたかったが、荷物を取りに行けてないから泣く泣くまだ解約はしていない、落ち着いたら引っ越し作業をしよう。



 明日、私が配属されるのは東京都内の郊外にある、ゴフテッド対策局金蚕きんさん支部である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る