第三話 おやすみとおはよう

//SE 廊下を歩く音


「あーさっぱりしたぁ。良い湯加減じゃったねぇ」


//SE 冷蔵庫を開ける音

//SE 取り出した麦茶をごくごく飲む音


「ぷはぁ! うまいっ!! え、おっさんくさい? おっさんも可愛いんよ? ちょっと布団とこ行きねいおじさーん♪ まだ若いんだからおっさんうな? まぁまぁ良いけぇ良いけぇ」


//SE とさっという布団に腰を下ろす音


「うち、いっきまーす!!」


//SE どーん!という背中が布団へとぶつかっていった音


「こうやってさ、うちが体当たりしても受け止めるだけの懐があってよ? でもって、これ」


//SE ふにふにと脇腹をつまむ音


「こーんな、つまみがいのあるお肉があってよ? しぶかっこよかったらもう可愛いじゃろ? ぇえ? 可愛いとカッコイイの同居がすでにわからん?!」//ちょっと考えるふうに


「そうじゃねぇ、例えばよ? 例えば、かっこいいお姉さんがおってよ。んー、秘書? 秘書! その秘書のお姉さんはとっても有能で、いつもカチッとしたスーツ着とって、『社長、これが先月の売り上げデータです』(//かっこいい秘書ふうに声を出す)とか、『社長、本日の予定の確認をお願いします。十時から…』(//かっこいい秘書ふうに声を出す)って話すん」


「んで、そんな秘書さんがよ。たまのたまのごくごくたまーに、ミスとかちょっとしたドジやった時に頬を赤らめながらワタワタしちょったら、どがぁなどう? かっこ可愛い成立せん??」//首を傾げながらたずねる感じで


「うんうん、じゃろー? え? うちの女の子への解像度が高いのは何でか? そりゃうち、可愛いもの好きじゃもん〜。男の子も、おじさまも、おばさまも、女の子も、可愛い服も可愛いキャラクターも。ありとあらゆる可愛いものを愛してますから!」//えっへんと胸をはりどんと拳を打ち付けながら


「んもう! そんなねんでも……ちゃんと、好きじゃもん。……っそっちこそどーなんよ?! うちにばっか言わせんとから、きちんと、言葉にしてくれんと嫌なんじゃけどっ!」//てれつつ怒りつつといったふうに


「あー! ごまかしたっ! そっちがその気ならうちだって考えがあるんじゃけぇね!! ええぃ、こうしてこうして、こうだ!!」//乗っかっていたのをおり、腕ひしぎ十字固めをする


「どうだ参ったか! って、……ん、ちょ、ちょっと、っあ!」







「もう、照れずにストレートにうてくれてもええんに。今日は本当にお疲れ様。おやすみなさい……」//ちゅっとリップ音










//SE トントントントンとリズミカルな包丁の音


「あ、おはよー。しっかり眠れた? え、すっきりしたし可愛いをたくさんチャージしたからめちゃ元気? ……ばかっ」//照れた感じで


「今ご飯作りよるけんね〜。朝刊は取っといてからテーブルの上にあるけん」


//SE トントントントンとリズミカルな包丁の音


「ハンカチはちゃんと用意しとるん? も〜、最低限の身・だ・し・な・み! 取ってきなねー」


//SE ジュワー、ぱちぱちぱち。と卵がフライパンの上で焼ける音


「今日は目玉焼きじゃけんね! かけたいもんは自分で取ってや〜。お茶はもうちょい待って〜」


//SE シュンシュンシュンシュンと薬缶からの蒸気の音


「あ! ちょっと待ってその前に、そのシャツならネクタイはあれが良ぉ似うとるけん、ええと、あれよあれ、そう! ワインレッドで、細かい花の幾何学模様があるやつ! え、場所がわからん? ちょっと待って〜」


//SE フライパンの上の卵をお皿に移す音


「今お茶沸かしよるけん、湧いたら火ぃ止めとって〜」


//SE パタパタとウォークインクローゼットへと歩く音


「あれ、おかしーなぁ。確かここにあったと思ったけど。あ! あったあった、これこれ」


//SE パタパタとキッチンへと戻ってくる音


「ほらこれ! この前の誕生日プレゼントに買ったやつ♪」//胸に当てて色味を確認して嬉しそうにしながら


「うん、これがえぇよ。良ぉ似合うとる! よっ! 日本一いけてるぅ〜♪」


//SE ちゅっというリップ音


「ひゃわっ! ちょ、急にどしたん?!?」//照れた感じで


「褒めてくれたお礼? ん、どういたしまし、て? ……ふふっ」//柔らかな声で


「え? うん。こういうのなんかええよねって、ふと思って。いや、だってさ、一人暮らしん時はお休みもおはようも言う必要ないじゃろ? んで、いただきますは言うけど、向かい側に人はおらんし。じゃけぇ、なんか、良いなって思ったんよ」//微笑みながら


「さてと。髪のセットは済んだ? じゃあ、お皿運んじゃお?」


//SE パタパタとキッチンとダイニングテーブルを往復する音

//SE お茶を注ぐ音


「そろぉたかな? では、いただきます」


「卵の焼き加減どがぁな? 好みに焼けてる? 良かった。え? 好みじゃなくても一生懸命焼いてくれたから関係なく美味しい? ふふふ、ありがと」//照れながら


「今日は仕事どんな感じなん? 遅くなりそ? そっかー、あんま無理はせんとから、どうしても体きつぅなったら、メールもらったらうちが急病になるけん教えてぇよ? そりゃもう、迫真の演技で帰らにゃいけんようにするし。ほんと、倒れてしまわんかが心配なんじゃけぇ」//ちょっとむくれた感じで


「わかっとるよ、大事な仕事なんも。けど、仕事を大事に思うくらい、ううん、それ以上にうちが心配して、大事に思っとるってこと、忘れんといてよ?」//心配そうな声で


「生きとるんが、大事なんじゃけぇね? ほんと、ここにちゃんと、息を吸って吐いて、おるんが、良いんじゃけぇ。うちがそう思ってるってことだけは、絶対忘れちゃ嫌じゃけんね??」


「うん。それ聞いて少し安心した。けど、時たまありえんくらい無茶する時があるけぇ。うん。今日も、無事に帰ってきてね?」


「心配性って、だって大切なんじゃもんしょーがないんですぅー」


「あー食べた食べた。え、うちも買い物とかする時には車とか気をつけろ? ん、心配ありがと。ちゃんと右見て左見て、も一回右見ながら横断歩道渡るけん。うん。じゃあ、ご馳走様でしたっ!」


「食器シンクに片しとってー、ちゃんと水にはつけていってよ? 乾くと特に米粒とかひっつき上げてから、なかなか取れんのんじゃけんね! うん、よしよし。褒めて使わそう」//嬉しそうな声で


「忘れ物はない? ハンカチおっけーじゃね。お財布と、スマホは? よし。じゃあ、いってらっしゃい」//ちゅっというリップ音

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る