day7 洒涙雨

 その日は七夕だというのに雨で湿度が高くてテオはうんざりしたように襟足の毛を触った。

「雨、鬱陶しいなー」

「湿度キッツいね」

 向かいの席の千晴も口をへの字にしてハンディファンを首の後ろに当てる。

「今日七夕なのに雨とかさー。つーか去年も雨だっけ」

「七夕は雨多いね」

「だよね」

 そこまで忙しくないこともあり、二人はポツポツと雑談をしながら手を動かす。

「はー、俺の織姫ちゃんはどこかなー」

「森永くん彼女いないの」

「いないいない。募集中。こうふわふわで温かくてキュンとするような可愛い子募集中」

「それ、ぬいぐるみじゃん?」

 テオはそうかも? と首を傾げる。

「いや、でもね!? ぎゅっとしたら恐る恐る抱き返してくれるようなキュンとくる子がいいんだよ。ぬいぐるみ抱き返してくんないだろ」

 それはそうだ。けどそんな高い理想に引っかかるような女の子はいるのかなあ。千晴も首を傾げてしまった。

「んー、織姫はいないけどミルキーあるよ」

「マジで! ミルキーめっちゃ好き。ありがと!」

 テオは受け取ったミルキーをぽいっと口に入れる。

 そしてカバンを持ち上げて中をガサガサとあさった。

「あ、あったあった」

 カバンから目当てのものを取り出してテオは千晴に差し出す。

「これあげる。金平糖なんだけど」

「ありがとう。金平糖好き」

 笑顔で受け取った千晴だが、包みを開けて困ったような顔になった。

「どったの?」

「あ、えっと、もらって大丈夫なやつ?」

「もちろん」

「……そっか」

 晴れない顔の千晴にテオは無性に寂しくなるが、それをうまく言葉にできなかった。

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