政府の女
朝7時 泣かされて起きた。あぁもう鬱陶しいなぁ。他の泣く声も聞こえる。
約25年前、政権交代に伴い、私は政府のもとで働くことになった。
首相官邸の地下に呼び出され、実験が行われている。
脳の前頭葉を切除してその代わりとなるチップを埋め込むというとても残酷なものだ。
入ったばかりの私は実験の夢ばかりにうなされ、吐き気も催した。
2年の月日を経て、実験はどうやら成功したらしい。
今から3年間の準備期間をかけて、国民に全部埋め込んでいく。
感情は『憎しみ』『悲しみ』『嬉しさ』この三つを軸にしてプログラムして埋め込む。
私にもそれは埋め込まれ、着実に感情社会主義の土台へとなっていった。
でも、一部例外があって、γの血がある人はどうやらこのチップが適応できないらしい。その子のためにも一応家や人権をなくしといた。
そして今、政権交代して感情社会主義が確立して20年が経った。
私は「あっはははは、あはは、、」はあ、まただ。
自分の顔がイカれていくのはもう気付いていた。
感情だけでなく自分が自分でないような気がした。
いつの間にか本物の感情を探す自分がいた。
違う風が吹いていた。
私の目の前には忌み子と思わしき少年が1人立っていた。
「ねえ、君って忌み子?」と話しかける。
少年は早口になりながらそうですと言った。
なんでだろう。なんで感情も自由なのにこんな瞳は死んでいるのだろう。
憎らしくて、憎らしくて、でもどこかわかるような気がした。
この少年の感情をもっとみたい、そう思ってしまった。
共感をして、話をして、少年はどこか嬉しそうで、悲しいようで。
その瞳には涙を浮かばせていた。
とてもその感情は美しくて美しくて、私たちにはないものだった。
あぁ羨ましい。憎たらしい。私はこうなりたかったのに。
胸元にあったナイフで少年を刺した。
少年の瞳には絶望と憎しみがあった。
壊れていく命を振り絞って、感情を出している。
後の14時 『憎しみ』という感情が共有された。
ん?あれ私自由な感情あるじゃん。
感情社会主義 こがね虫 @koganemushi11
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます