第33話 急展開

 幽霊と話した後、俺はチャイムギリギリで席に座っていた。

結構長い時間話していたみたいだ。


「なぁ、1時間目って何だ?」


俺は隣の奴に話しかけた。

別に前に居る向に話しかけても良かったが少しでもクラスの奴らと話したかったのだ。

隣の奴は見た感じ真面目そうだ。

まぁ、馬鹿みたいなやつよりかは良いだろう。

会話が成り立つしな。


「えっ……私に話しかけたの?」


隣の奴はか細い声で応えた。

よく顔を見てみると眼鏡の奥の瞳から絶望が感じられた。

人生に絶望しているのだろうか……大丈夫か?


「あぁ……お前に言った。」


俺は小さい声で応えた。

先生はまだ来ていないが念の為だ。


「えっと……国語だよ。」 


「そうか、ありがとな。ついでに何だがお前の名前は?俺は涼風杜庵だ。」


この学校には自己紹介の時間がなかったのでついでに隣の奴の名前を聞いておく事にした。

クラスメイトの名前を把握することは重要だ。


「喜名……」


喜名は短くそう言った。

喜名か……覚えやすいな。


「ありがとう。良い名前だな。」


喜名には何か闇があるかも知れない……完全に俺の憶測だが。

余っ程の闇を抱えていない限りあんな瞳はできないだろう。


「この子は何か覚悟を決めたような目をしてる。」


俺の近くに居た幽霊が言った。

覚悟を決めたような目……幽霊にはそう見えたらしい。

幽霊はやっぱり心を読む事が出来るのだろうか……

まぁとりあえず国語の授業を受けるか……


 急展開は好きだろうか?

急展開には良い方向に向かうものと悪い方向に向かうものがある。

今日起きた急展開は俺の人生を180°変えるものとなった。

それは地獄の授業を終えた後の放課後に起きた。


「は〜何で傘を持っていない日に限って雨が降るんだろう?」


俺は図書室でそんな事を呟いていた。

何故図書室かと言うと、教室が閉められたからだ。


「止みそうな雨だから待ってたんだが、中々止みそうにないな……帰るか……」


そう言うと、トイレに行っていた向が帰ってきた。

タイミングが良い。


「雨も止みそうにないし帰ろうぜ。」


「さっきより強くなってるね。」


「多分今学校に居るのって俺達と先生だけだよな……どっちかが傘を持ってたらもっと速く帰れたのにな。」


「まだ私達以外にも居るよ。さっき1人とすれ違ったもん。」


「ふ〜ん知らない子か?」


「いや……確か杜庵の隣の席の子だったような気がする……」


「えっ!?何処に行ったんだ?!」


「えっ……確か……あの方向は……屋上?」


俺はそれを聞いた瞬間、走り出した。

嫌な予感がしたからだ。

目的地は勿論屋上だ。


「ちょっと!どうしたの?」


向が追いかけて来た。

ついでに幽霊も……


「はぁ、はぁ、はぁ」


俺は急いで屋上の扉を勢いよく開けた。

そこには、飛び降りようとしている喜名が居た……


「おい!何してるんだ!」


「貴方には関係ないでしょ!」


「あぁ、関係ないさ。だが、お前を死なせるわけにはいかない。」


「初対面でしょ!」


「確かに初対面だ……俺にはお前の自殺を止める権利もない。だが、理由を聞かせてくれないか?俺が何とか出来るかも知れない。」


「無理!貴方には理解すら出来ない!」


「でも聞かせてくれ!」


「言ったら……帰ってくれる?」


「あぁ、約束しよう。」


そして、喜名はポツリポツリと何があったのか話してくれた。

どうやら喜名は能力者らしい。驚きだ。

でも能力が上手く扱えなくて大変な事になってるらしい。


「そうか。話してくれてありがとう。」


「どう?理解出来ないでしょ?とっとと帰って!」


「いや……理解出来る。そして、解決もできる。実は……俺も能力者なんだ。しかも“能力を奪う能力”だ。だから今から喜名の能力を奪う。そしたら解決する。」


「……」


喜名は衝撃のあまり言葉を失っていた。

まぁ良い。

俺は能力を発動した。

喜名の能力を奪う。


「ぐっ……!!この能力!強い!!」


喜名の能力は余りにも強力過ぎて奪うのに大分体力を使う……

だが……何とかなったな……

俺は体力を全て使い果たした代わりに能力を奪った。

その瞬間、向と幽霊がやっと俺に追いついた。


「何があったの?!」


向と幽霊が同時に言った。

俺は説明しようと立ち上がろうとした。

だが、目の前が歪み、足を滑らしてしまった。

マズい!!!……落ちる……

世界がスローになる。

走馬灯が脳を駆け巡った。

そして、意識を失った――


 ここから何が起こったのは、これを読んでいる貴方の想像にお任せします。

少なくとも、良いエンドにはならないでしょう。

でも、そういう運命だった。と割り切るしかありません。

読んでくださりありがとうございました。

※最後のほうの物語がおかしいと感じたらすみません。記憶が曖昧だったそうです。












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涼風杜庵と不運な少女 杜鵑花 @tokenka

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