第32話 背後に……

 雑談と言うと殆どの人が日常的なのんびりとした会話を思い浮かべるだろう。

しかし、今日の俺達雑談はいきなり、非日常的な会話から始まった。


「ねぇ、杜庵。幽霊みたいな霊的なものって信じる?」


「信じてない。」


ワンチャンあいつが幽霊じゃない可能性がある。

俺自身霊的なものを信じてないしな……


「私は信じてるけどな〜だって面白くない?実際に幽霊とかが居たら!」


「非現実って感じがして面白いかもな。」


「そうでしょ?ところでだけどさ……杜庵の後ろの辺りから何かおぞましい気配を感じるんだけど気の所為かな……」


俺の……後ろ?

凄く嫌な予感がする……

向の気の所為だったら良いんだが……


「もしかして幽霊だったりして!」


「そうだったらタイミング良すぎだね~」


俺は一瞬だけ後ろを見てみた。

案の定居た。タイミング良すぎだろ。絶対に誰かが仕組んだって。


「どう?驚いた?自分の気温を調整出来るようになったから気づかなかったでしょ?」


幽霊が言った。

寒さは感じなかった。

速く帰って欲しい。


「ねぇねぇ、杜庵って霊感あるの?」


「霊感?多分無いと思う。分からないけどな……逆にお前はあるのか?」


「私も無いと思う。今まで見たこと無いし……」


今、目の前に幽霊が居るんだけどな……

幽霊は向の目の前に移動して向をじっくりと眺めている。


「誰?この女!」


幽霊がいきなりそんな事を言い出した。

そういう関係でも無いのにな……


「そうか。まぁ見えないものは見えない方が良いと俺は思うけどな。」


「まぁ、見えても怖いものだったら嫌だよね~」


この幽霊も見えさえしなければ無害なのだ。

恐らく……


「何で無視するの?」


幽霊がそう言ってきた。

メンヘラかよ……

俺は無視することにした。

逆にそれしか出来ない。


「あっ、学校に着いた。家が近いって良いよね。」


「そうだな。電車代とかかからないし……」


俺達は靴箱に向かった。

さっきから幽霊が俺のことをポカポカ殴ってきている。

幽霊からは攻撃出来るらしい普通にズルい。


「ちょっとトイレ行ってくる。」


靴を履き替えた俺は幽霊と話すべく一旦向と離れることにした。


「おい、何で学校にまで着いてきてんだ?」


俺は誰も居ない屋上で幽霊に問いかけていた。

この学校は珍しく屋上が立ち入り禁止ではない。

屋上のフェンスも無い。

危険なのにな……


「いや〜暇だったからつい。」


「テレビがあるだろ?」


「面白いのしてないもん。」


「まぁ良いや……今日だけは特別に許してやるよ。その代わり俺とお前以外に誰かが居る場合、話しかけられても返せないからな。」


「やった〜ありがとう!」


大丈夫だろう……多分。

面倒くさくなった俺は考えるのをやめた。

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