第28話 幽霊は突然やってくる

 俺は正直、シチューはあまり好きじゃなかった。

だが、向が作ったシチューは絶品だった。

あのシチューなら何杯でも食べれる気がする。


「なぁ、うますぎるシチューを食べ終えたわけだがこれから何する?」


「ゲームをするんじゃないの?」


「あっ……シチューがうますぎて忘れてた。じゃあなんのゲームする?」


「これとか面白そう。」


「じゃあそれやるか!」


俺達はその後、夕方になるまでゲームを楽しんだ。


 「あっ!もうこんな時間じゃん!私そろそろ帰るね。」


「送っていこうか?」


冬だからか辺りは暗くなり始めている。


「いや、いいよ。家も結構近いし……」


「そうか。じゃあまた明日な。」


「うん。またね。」


向が帰ると、家に静寂が訪れた。

冬の寒さが辺りを包む。

どんどん気温が下がっていく。

もう体感温度は1℃ぐらいに感じる。


「いくらなんでも寒すぎやしないか?ここは家の中だぞ?」


明らかにおかしい。

家の中が冷蔵庫の中かのように寒い。

後ろにある廊下からギシギシと足音が聞こえてきた。

この家は事故物件だったか?

俺は意を決して後ろを振り向いた。

しかし、何も居なかった。


「勘違いか……」


「う〜ら〜め〜し〜や!」


「うわぁ!?」


いきなり背後から声がした。


「ねぇねぇ、今、驚いたよね。ふふっ、こんな事でこんなに驚いていたら生きていけないよ。」


俺は声がする方を向いた。

そこには、幽霊が居た。

頭に三角の布をつけたよく見る幽霊だ。

普通に話かけてくる。

しかも、煽ってきてないか?

殺してやろうか……いや、既に死んでるな。

いやいやいや、それより何で幽霊が居るんだ?


「お前、不法侵入だからな。」


「いきなり冷静になった!なんなの?」


「それはこっちの台詞だが。」


「私は見ての通り幽霊だよ。」


「そんな事は分かってんだよ!」


「そっちが聞いてきたんじゃん!」


「は〜なんだ?この幽霊は……家に塩あったっけな……」


「塩を探さないで。普通に効くから。除霊されるから。」


「あっ!あるわ。確かここに……」


「無視しないで!呪うよ!」


なんか今、めっちゃ恐ろしい事言わなかった?

まぁ、良いか。


「あっ……塩も生で食べたんだった……」


「えっ……もしかして死んでる?塩分の過剰摂取で死んでる?」


「死んでねぇよ。五月蝿いな~!」


俺は今、凄くテンパっている。

家に幽霊が現れたのだ。

誰だってテンパるだろう。

ゴキブリみたいに現れやがって……あっ!ゴキブリならスプレーで……いや、ゴキブリじゃね〜わ。

本当に思考回路がショートしてる。

あ〜本当にこいつどうしよう?


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