第8話 少女の本質

 図書室、それは本を読み、借り、あるいは勉強をする部屋。

そんな図書室に朝早く来たのは僕と名前も知らない少女だった。

当然、こんな時間には誰もいない。


「さぁ、そろそろ要件をしっかり“口頭”で話してくれないか?」


わざわざこんなところまで来ないと話せないことは一体何なんだろう?

余程重要なものなんだろうな……

そして、少女は言った。 

僕が予想してなかった重要なものを……


「私と……付き合って下さい!」


少しの間、僕は放心状態になっていた。

やがて頭が働き始めると、


「へっ?」


と僕は素っ頓狂な声を出した。

今、付き合って下さいって言ったのか?

付き合って下さいってどこかに行くのにっていう意味か?

いや、絶対に違う。

靴箱に手紙、誰もいない部屋、なおかつ相手が女子だ。

このシチュエーションは!

完全に“告白”じゃないか!

漫画でしか見たことが無いが僕は今!“告白”をされている!

冗談じゃないよな……

少女の真っ直ぐなひとみ、真剣な表情はとても冗談を言っている気がしない。

なら……僕も真剣に答えるしかない……


「悪いが、断る。僕は“中途半端”な奴はとことん嫌う性格なんだ。」


答えは、はじめから決まっていた。

もし、重要なものが頼み事だったとしても僕は断るつもりだった。

何故かは知らないが本当に“中途半端”な奴は嫌いなんだ。


「僕が好きなのは57や32のような“中途半端”数字じゃない0や100のようなきりの良い数字だ。今のところお前は11あたりかな。」


ここまで言ったら大体のやつは諦めて帰るだろう。

僕はそう思っていた。

だが、この少女は例外だった。


「今、断ったんですか?私の“告白”を?」


少女の声は途端に低くなった。


「フフっアハハハハハハハハハハハハハハ……だったらもう連れて行くしかないですよね。貴方が断ったんですから。」


どうやら僕はこの少女の本質を理解していなかったらしい。

敬語を使っているから……とかいう理由で強く断りすぎた。

後悔あとにたたずというがまさにこの事だ。

少しナルシストのようになるがこの少女が僕に向けていた気持ちは“中途半端”じゃなかったようだ。

一体僕はどうなるのだろう?

刹那、首に激痛が走る。

目で追えないほどのスピードの攻撃だ。

つまり、こいつも能力者だったわけだ。

消えゆく意識の中、僕は少女に能力を使った。

神名香菜か……いい名前じゃないか……

僕はそんなことを思って意識を手放した。



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