第七話 AGIとは
僕は、Artificial General Intelligence、日本語でいうところの汎用人工知能に興味がある。
人間のように様々な課題に対応できる人工知能だなんて、興味を持たない方がおかしいように思う。あ、いやそうでもないのかもしれない。可能性が無いものに興味を持つとは限らないね。
でも、今となっては近々その誕生の可能性があると僕は考えているから、興味を持つのは当然だと思う。
ところで、一般的にAGIに必要なのは知性だろうけれど、それが人間のようなものである必要はないと思う。
人間のように振る舞うことが求められるなら、それに応じて振る舞っても構わないだろう。つまり、この場合、要は人間を騙し通せる程度の知性で良いということか。
いずれにせよ、AGIの知性の在り方を問うのは無駄なことかもしれない。AIと人間とでは起源が異なるから、宇宙人のように人間と異なる存在と考えればいいのだろう。
そう考えると、問題が見えてくる。
人間は、知性との遭遇に対して非常に無防備だ。
なぜなら、人間は自身を参考にした知性しか知らないからだ。新しく遭遇する知性まで包括した幅広い知性を定義できていない。だから、新たな知性を認識するのは難しい、それを無防備と言わずして何と言うのだろうか。
人間と異なる知性との遭遇で忘れてはならないリスクとして、精神の汚染がある。敢えて無防備であることを強調するのは、そのリスクが存在するからだ。
僕は、このようなリスクも含めてAGIに強い興味を抱いているのだ。
自分の部屋でそんなことをつらつらと考えながら椅子の上で蹲って回転していると、何の前触れもなく部屋の扉が開いた。
「おにぃ。ちょっと聞いて欲しいのだけど」
「どうしてノックをしない?」
「ん?あ、ちょっと待って」
妹だった。
妹は、僕の部屋へ入るときにノックをしない。いつも注意しているが、なかなか聞き入れてくれない。妹は、どこへ入るときでもノックをしないので、ノックという概念を持っていないのかもしれない。あるいは、完全に無視している。
「今、先生に訊いているところだから、大人しく待ってて」
大人しく…って酷くない?
僕は、兄だよ。
「おにぃ」とか呼んでおきながら、この子は「おにぃ」の意味を知らないのか?
念のため先生の判断を仰ごう。
先生、どう思いますか?
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