第9話

そうは言っても、それをどう伝えるかが問題だよな.......



手話なんてまだ通じるわけもないだろうし。



そう思いつつも、ダメもとで、ゆっくりと、彼女に見えるよう手を動かしてみる。



(なにがあったのか、はなしてくれるか?)



こっちを見てくれはしたが、返事はない。

まぁ、やはり通じないだろう。



「......ほんとに、話してもいいの...?」



俺は、反射的に頷いた。


と同時に、驚いた。

きっと、あれからも手話を勉強して、

俺の言うことを読み取ろうと努力してくれていたわけだ......


そんなに俺は、彼女にとって大きな......

彼女にとって、俺はなんなんだ...?




いや、今は話を聞いてやろう。

そしてできることなら、誰からも見放された俺が、彼女のために手を差し伸べてやりたい。



「ねぇ、ほんとにいいの...?私なんて、見ず知らずの赤の他人なんだよ、たった1週間足らずの付き合いなんだよ...?」



そんなこと、関係ないじゃないか。

俺は、もう一度強く頷いた。



彼女は、また泣いてしまった。

それでも涙声で話し始めた。



「私ね、ずっと死にたかったんだ。ずっと、ずっとずっと辛かったんだ。それに、今だって死にたい。斉原さんがいるのに。」


「私がつらいとき、辛い話する訳じゃないけど、他愛ない話して。私にとって、それがすっごく救いだったんだ。」



俺はまた、深く頷いた。



彼女が自分のことを『私』と言っているのを聞いたのは、これが初めてかもしれない。

それにも、彼女なりの理由があったのか。

深く関係してるのかもしれない。


俺は続けて、彼女の話を聞いた。


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