神誓王国侵攻編② 王宮の守人と黒焔の修羅
「今現在、パリキス第四王女のご遺体はサランディード・アルグ・メルテシオン第二王子が城内に運び込んだと目されているが、どうやら幽冥神の城内神殿に運び込んだきらいがある」
「……はあ?」
間の抜けたヴェイルの一言に、アズマリアの鋭い視線が向く。
生きた心地がしないので、ヴェイルは取りあえず訳の分からない事を言われても、ノーリアクションで乗り切る事を決意した。
新人の彼にはメルテシオン城内や暗黙のルールなど知らないことが多すぎる。
幽冥神とはメルテシオンが信仰する十二の神の内の一柱であり、王城の地下一階には時計のように十二の神殿が内在している。
地下フロアはそれぞれ十二分割されており、そこは宗教ごとの治外法権のように独立した区画となっていた。
各神殿に入るにはそれぞれの神を崇める司祭以上の許可が必要であり、許可が無ければ例え王宮近衛騎士団であろうが、天翼騎士団であろうが立ち入りは許可されない。
唯一素通りが可能なのはメルテシオン王家の人間だけである。
この奇妙な領域はそのまま王城を守護する王宮守護隊の派閥争いに反映されており、僧兵で組まれた部隊は恐ろしく連携がとれていない。
各々の領域守護の僧兵は自分達の宗教派閥から選抜されており、自陣領しか守ろうとせず、情報共有も端から別派閥とする気がないからだ。
そのため一階の防衛はかなりザルに等しい。
唯一機能しているのは王宮近衛騎士団だが、王族守護を旨とする彼らは殆どが王族が住まう三階と四階フロアにおり、それ以外のフロアにはそれほど人員を割いてはいないのだ。
かつてのパリキス王女誘拐事件の原因の一つが、この一階フロアの杜撰な警備のせいなのは言うまでもない。
どこかの派閥が手引きすれば、城内に間者を潜ませるのは容易な事なのだ。
「問題は一階を守護している王宮近衛騎士団か。今のシフトはどうなっている?」
ガルンが王宮近衛騎士団に在籍していたのは八年近く前である。
新人のヴェイルもそうだが、組織図も、防衛方針も変わっている可能性は高い。
冥闢のダークブレイズ 星住 @hoshizumi
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