第5話

 物語が終わり、女の子がうっとりと目を細めた時、ドアが開いていることに気づいた女の子の母親が驚いた顔をして中を覗き込んだ。



「こら、ソフィー。マリアンナ大おばさまのお部屋に勝手に上がっては駄目じゃない。大おばさまはご病気なのよ」



 女の子はびくりと顔を上げ、それからくしゃりと顔を歪めた。



「……ごめんなさい。元気だって言うから、わたし、いいのかと思って。もう病気は治ったと思ったのに、大おばさまはやっぱり、身体のお加減がよくないのね」


「なにも心配することはないわ、ソフィー」



 そう言いながらマリアンナは妹の孫であるソフィーの頭を優しく撫でた。



「ラロが必ず私を迎えてくれるの。そして私は天に昇らず、アーラロトで暮らすの。素敵でしょう?」


「ええ、とっても。わたしは毎晩、大おばさまを見上げられるわね」



 マリアンナは嬉しそうに笑って、私はずっとその時を待っているのよと懐かしそうに目を細めた。

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マリアとラロ 蒼キるり @ruri-aoki

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