第28話 方眼

「にーちゃん、数学わからん」

「それが兄に教わろうとする態度か」

「なんでもいいじゃん」

 進が数学ドリルの冊子を持って夕食の食卓に付いていた時点で何かを察するべきだったのだ。礼央が先に食べ終わってからさっさと自室に引き上げた所までは良かった。おそらく親が進に教えてくれるだろうと期待したのだが、親の教え方では分からなかったらしい。この数学のドリルは八月の上旬にある登校日までに仕上げなければならないようで、進も一応は早めに取り組んでいるようなのだが、解法に躓くとすぐ人に頼ろうとする。

「自分で解けよ」

「それができないから来たんだよ」

「はあ……」

 仕方なく礼央はドリルを見た。一次関数の単元だ。もはや懐かしいとしか言いようのない方眼が印刷され、この式のグラフを書いて何々を求めよ、云々と書かれている。礼央は文系ではあるが、さすがに中学の数学くらいなら分かるはずだ。礼央はシャープペンシルを手に取り、まずは自分が解いてみようと問題に向き合った。

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