第24話 ビニールプール

 予備校の授業が早めに終わる日だったので、礼央が地元の駅に着いた時もまだ昼間の名残のうだるような暑さは続いていた。太陽はさすがに南中よりはぎらつきを減らしているものの、じりじりと肌を焼く熱は変わらない。自転車で坂道をのろのろと登りながら、早く帰ろうと家路を急いでいると、比較的新しい一戸建ての玄関前にカラフルな色が見えた。

 白い砂利とコンクリートでデザインされた洒落た外構に、ビニールプールが置かれていた。隣家との境目近くにある水栓からホースを繋いで、ビニールプールに水が溜められている。水位は低いが、園児くらいの年齢に見える子どもたちが二人、きゃあきゃあと騒ぎながら水を掛け合っている。長いホースの先を片方の子が持ち、もう片方の子は透明なプラスチックの水鉄砲を構えている。どう見てもホースの子が有利なように見えたが、水をかけようとして絡まったホースが反発するのは予測していなかったのか、ホースの先は子どもの手を離れてぱっと宙を舞った。水滴が飛び散り、礼央の頭の上にも降ってきた。

「あっ! ミツキいけないんだー!」

 水鉄砲の子どもが声を上げる。礼央の頭は少し濡れたくらいで、どちらかというと自転車のタイヤの方にかかっていた。ホースの子どもは、じょろじょろとまだ水を道路に垂れ流しているホースの先を拾ってぺこりと頭を下げる。礼央の荷物は無事だったので、大丈夫だよと手を振ってアピールした。礼央としては、一瞬ではあるものの涼しい思いをしたので、ちょっと得したような気もした。

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