第21話 朝顔

 猛暑が続いた後の雨の朝は、湿気は多いが少し涼しく思えた。名古屋駅に着いても霧のような雨は降っていて、礼央はビニール傘をさす。信号待ちの間にふと目をやると、街路樹の影になった下草に朝顔が絡みついていた。昨日までの暑さでしおれた蔓もあり、種を包む皮も茶色く枯れている。咲き遅れたらしい花が一輪、二輪とまばらに咲いており、乾いた色の下草の中ではみずみずしく見えた。

「おはよう、楊井くん」

 声がして振り返ると、穣がひらひらと手を振っていた。からし色と黒の傘だ。今日は楽器は持っていない。灰色の雨模様の中で、からし色の傘は鮮やかに目に映って、礼央は少しばかり瞬きをした後におはようと返したのだった。

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