第20話 甘くない

 すいかを頂いたからと、おやつにカットしたすいかが出てきた。真っ赤な果肉、ぽつぽつと白と黒の種、緑に黒い縞模様の入った皮。よく冷えた果肉をスプーンですくって口に入れると、甘い。

「おいしい」

「うん、おいしい」

 礼央と進は食卓で舌鼓を打って、スプーンで果肉を掘り進めていった。進は夏休みに入り、一層黒く日焼けした。野球のウェアの形に日焼けするので、家でタンクトップ姿でいたりするとまるで肌色のTシャツを重ねているように見える。

「すいかの種って不便だよなー、アイスの方のすいかなら種そのまま食べれるのに」

「まあ種ないと増やせないし、しょうがないんじゃない」

「ナッツとかは種そのまま食べられるじゃん」

「種類が全然違うだろ」

 他愛ない話をしながら食べ進めると、あっという間に果肉の赤は薄まって、皮の白が透けて見えてくる。果肉が甘くなくなってきたら、それ以上掘り進めるのを止めた。

「ごちそうさまでした」

 兄弟揃って食べ終わり、種と皮をゴミ箱に捨てる。気分転換の時間は終わりだ。食器を洗い終えた礼央は、勉強の続きのために自室に戻った。

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