第19話 爆発
「リア充爆発しろ」などという言葉が使われ出して久しいが、起源をたどれば某動画サイトや掲示板などの名前が上がる。去年のことになるが彼女がいたこともある礼央としては、軽々しく使って欲しくない言葉でもあった。自分はともかくとしても、気立ての良いまりえが妬み嫉みでトラブルに巻き込まれるのは見たくはない。幸か不幸か、礼央は見目麗しいとかひっきりなしに言い寄られるとかそういったこととは無縁であり、礼央と付き合うことそのものでまりえを嫉妬した者は知る限りいないだろう。ただ、「リア充爆発しろ」という言葉はいかなる属性の人間であれパートナーがいるというそのことだけで嫉妬をされた結果の言葉だ。言うなれば通り魔のようなものである。
それでは彼らは自分を生んだ父母をもパートナーがいるという一点のみで爆発しろと呪うのだろうか――などと大真面目に問うたところで無駄だろう。こういった嫉妬に筋や道理は通らないものだ。無理が通れば道理が引っ込む。
さて、まりえとの交際は過去の話である。今はパートナーもおらず、さりとて気楽と言うには程遠い浪人生の身。悲しいかな、大学受験に向けて日々勉学に励むのが第一の義務である浪人生では、仲間内であろうとロマンスには程遠い。どちらかというと、ロマンスは問題文の中にある方が多い。
古典の授業で扱うのはその名も高い源氏物語。千年の時を経てもなお輝きの失せない古典の精華、格調高く華麗な当時の宮中文化を知る端緒でもあり、各所で研究がなされる文学作品である。その中で多くを占めるのは、光る源氏の君を中心にした多くの恋物語であり、相手は少年少女から老婆までと幅広い。彼らに爆発しろと呪うのはもはや野暮だろう。もっとも、別方面の嫉妬による呪いを浴びせられているとも言えなくはないが、爆発というよりは急死したり病死したり溺死未遂だったり……と考えたところで、やはり呪いはよくないな、と礼央はうすら寒いものを感じたのだった。
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