第15話 解く

 前回の模試の解説が出ていたので、自分の間違えた問題を解き直すことにした。よくある学習方法なのだが、これがまた面倒くさいし、正直しんどい。うんうん唸りながら予備校の自習室に篭っていたら携帯電話に親からの着信が入り、礼央は我に返った。

 今日は祝日で、土日祝日は家で夕食を食べると決まっている。従って予備校での授業や自習の後は夕食までに家に帰るのが両親との暗黙の了解になっていた。時刻はいつの間にか二十時を回っており、礼央は慌てて今から帰る旨のメッセージを送ってから荷物をまとめて自習室を出た。

 空調のきいた室内に長らくいたおかげで、屋外の湿気が肌にまとわりつくようだった。祝日だからか、駅前は行楽帰りらしき人が多かったが、金曜日の夜のような酔っ払いは少ない。新幹線の改札の見える入口からコンコースに入ると、遠目にふと男性の二人連れが目に入った。

 どこにでもいそうな二十代くらいに見える男性たちだったが、礼央が目に留めたのは、片方の背の高い男性が何かのケースを背負っていたからだった。形が穣の背負っていた楽器ケースとよく似ている。背負っている男性が高身長なので、大きさは目算でしかないが、穣のものより一回り小さく見えた。あの人も楽器を弾く人なのだろうかと礼央が考えているうちに、二人連れの男性たちは新幹線の改札を通って見えなくなった。

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