第14話 お下がり

「あー、久々の模試は疲れるね」

「本宿くん、模試いつぶり?」

「模試じゃないけど、今年のセンター試験ぶり」

「それ本試じゃん」

「確かに」

 一日がかりの模試が終わり、礼央と穣、大悟は帰り道のファストフード店で落ち合っていた。夕食前だが、模試で頭を使ったためお腹がぐうぐう鳴りそうだ。フライドポテトとドリンクを頼み、トレイの上でフライドポテトを広げて各々つまむ。

「模試って結構な頻度であるもの?」

「だいたい月に一回くらいかな。夏は模試が増えるし、うちの予備校のに限らなければ月に二回ある時もあるかも」

 彼らの通う予備校が主催する模試は、校舎にいれば開催スケジュールは自ずと目に入ってくるし申し込みも欠かすことはない。しかし、一つの予備校の模試だと出題傾向や判定が偏るからと、他の予備校主催の模試も受ける生徒が多く、礼央や大悟もその例に漏れない。一方で穣はそういうことをしてこなかったのか、へええと興味深げに聞いていた。

「そりゃ、僕も二浪するわけだ」

「まあまあ。本宿クンの場合は、音大受験がメインなんだろ。それだと傾向と対策も違うもんじゃん」

 大悟も穣が音大受験を並行して進めていることを聞いているようだった。まあねぇと穣はポテトをつまんだ。

「これまで普通校の対策あんまりしてこなかったから、赤本とかも実は大学行った友達のお下がりしか持ってないんだよね」

「それは新調すべきじゃない?」

「そうだよ、もう書店で新しいの売ってんだから今すぐ買いに行けよ」

 礼央と大悟は口を揃えた。穣は神妙な顔でそうすると頷いた。三人の帰りの寄り道に、駅ビルの書店が加わった瞬間だった。

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