第8話 こもれび
予備校の教室から見えるビル街には、時折何らかの意図を持って植えられた緑がある。低めのビルの屋上なり、テラスのように張り出した場所だったりと形は定まらないが、本来植物が根を張るのとは異なる高さの、決まった量しかない土に根をおろし、コンクリートジャングルに本物の木漏れ日を落とす。
高校生の延長のような浪人生には自由になるお金なんてないので、商業施設が多く軒を連ねる都心部に毎日通っていても、その店舗の多くに入るほどの余裕は無い。せいぜい映画館か書店くらいだ。多分それは大学生になってもそこまで変わらないと思う。小遣いを気前よく出してくれる大人が居たりすれば話は別だが。
ああ、今日はまた腹立たしいほどの気持ちの良い晴れ間だ。礼央は窓の外から目を背け、黒板に目を戻す。同じ緑でも、今はこっちの緑の方が落ち着くなと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます