第7話 洒涙雨

 朝から曇り空だったが、夕方から弱い雨が降り始めた。礼央れおは図書館で勉強をしていたが、日曜日は閉館が早いためもうすぐ出なければならない。閉館のアナウンスと音楽が流れ始めたので、鞄にテキストやノートを仕舞って帰り支度を整えた。図書館のロビーまで出ると、笹の葉と星空が描かれた模造紙のパネルが出されていて、その前に置かれたテーブルで親子が短冊を書いていた。

 そういえば今日は七夕だったなと礼央は思い出す。合格祈願でも書いていくかとテーブルに歩み寄り、折り紙を縦長に切った短冊とサインペンを手に取ると、短冊を貼り付けていた親子の会話が耳に入った。

「雨だとおりひめとひこぼし会えないよ」

「でも、お空の上は晴れてるんだよ。この間飛行機乗った時に見てたでしょ」

「じゃあ会えるかな? お願いごと叶う?」

「叶うよ、アヤちゃんがいい子にしてたらね」

「してる!」

 礼央は短冊に「大学合格」とだけ書き、パネルの隅に貼った。親子は七夕の歌を歌いながらロビーを出ていく。親子の貼った短冊の願いごとはどれだったっけとパネルを見たが、たくさんの願いごとに埋もれてよく分からなくなっていた。

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