第6話 アバター

すすむ、タブレット貸して」

 礼央が弟の進の部屋を訪れると、進はタブレットと向かい合って奇妙な動きをしていた。両手を広げてゆらゆらと左右に揺れている。何かのダンス動画でも見ていたのだろうか。進は礼央に気づいて顔を向けたが、動きは止めなかった。

「今忙しいから後でー」

「……それ、忙しいのか?」

 遊んでいるようにしか見えない。進はつっけんどんに言った。

「めっちゃ忙しいし」

「そうか」

 礼央は生返事をしてタブレットの画面を見ようとした。笑顔の美少年の3Dアバターが表示されているのが見えたところで、進がタブレットを取り上げた。

「とにかくまだダメ」

「あっそ」

 そこまで言うのなら仕方ない。こんなしようも無いことで兄弟喧嘩をするのも面倒だったので、礼央はさっさと引き揚げることにした。タブレットはまた後で取りに来ることにしよう。

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