第3話 文鳥
「文鳥飼ってるの?」
文鳥柄の筆箱が目に付いたからそう聞いたら、まりえはあっさりと首を横に振った。
「ううん。可愛いから好きなだけ」
確かにその筆箱は可愛らしかった。文鳥のいろいろな角度からの表情や仕草のイラストがプリントで散りばめられ、キーホルダーなどがなくてもぱっと目に付くインパクトがある。大きくはないが、ペン何本かと消しゴム、定規くらいが入るちょうどいい大きさ。その筆箱をすっと取り上げて、まりえは移動教室だよと言った。
高校生らしく、たまに映画に行くとか、遊園地に行くとかいった付き合いだったが、今頃どうしているだろう。まりえはさっぱりとした人柄で友人も多かったから、大学に入っても人気だろう。強烈な切なさとか、古典にあるような鬱屈とした寂しさを感じるほどではないが、それでも礼央はまりえと遊びに行った日の楽しさを懐かしく思った。
けれど、次の受験は待ってくれない。今日も予備校の授業は一限からだ。礼央はのろのろと起き出し、朝の支度を始めた。
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