第6話 校内序列戦③
櫻舞中学校 第一剣道場
春は後方に張り出されているトーナメント表を確認する。
現在、校内序列戦準々決勝も既に三試合が終了し、準決勝に進出した”四名”の名前意外には斜線が引かれており、現在まで勝ち残っているのは、
Aブロック 水瀬龍馬 三年
Bブロック 村標蓮 三年
Cブロック 遠野拓海 二年
そして、春は自分が入っているDブロックを確認し、思わず舌打ちをする。
Dブロック 浅間春 一年 ―― 竜ヶ崎暁 三年(棄権)
〇
「具合はどうだ?」
櫻舞中学校 保健室
ベッドに腰掛ける暁に龍馬がベッド横の椅子に座り、話しかける。
「具合も何もたかがかすり傷にもかかわらず大げさなんだよ」
龍馬は暁を確認するが、頬に傷が見受けられるが、それ以外に目立った外傷は見当たらないが――
「一応詳しく見させてもらうぞ」
「心配しすぎだっての。おかんかよ!」
「そんなこと言わずに……あ、あめちゃんいるか?」
「大阪のおかんかよ!」
「なんだよ、その変な突っ込みは。とにかく傷を見せてみろ。治療してやるから」
「……ったく」
暁は観念するように他の傷口も見せる。
「……」
「……次は蓮との試合だろう?俺のことなんかよりそろそろ準備しなくていいのか?」
「お前よりも大事なものなんてねぇよ。それに俺は相手が誰であろうとも負けるつもりはない」
「そうかよ」
「……」
「……」
沈黙が二人を包み込む。
「暁、お前にとって俺はそんなに信用出来ないか」
「……なんだよ、急に」
暁の怪我の原因、それは校内序列戦だった。
二年部員が一年でありながら準々決勝まで勝ち進んだ春に嫉妬し、危害を加えようとし、それを防ぐ為に、暁は怪我を負った。二年前と同じように――。
ただ今回と二年前の違いがあるとすれば、蓮が警告していたおかげで、幸い大きな怪我にはならなかったことと、暁が一早く気づくことが出来たため、春に知られることなく処理出来たこと――。
だがそれは結果に過ぎない。
下手をすれば暁は大怪我をする恐れもあった。
にも関わらず、暁は誰にも相談することなく、一人で対処した。
「うちは確かに実力主義でチームワークはないかもしれない。それでも俺は、二年間同じ時を過ごしてきたお前のことを信じているし、今回のことも相談してほしかった……」
「……悪い」
龍馬は暁の怪我の治療をし終えると、立ち上がり、出入口へと向かう。
「本当に悪いと思っているなら、勝てよ。5位になれば団体戦に出場出来る。俺は自分より強い奴が出場出来ないなんて許さない」
それだけを言い残すと、龍馬は保健室を後にした。
一人残された暁は大げさに包帯をぐるぐる巻きされた自分の右腕を見つめると、ため息一つ。
「これは負けられなくなったな」
〇
櫻舞中学校 第二剣道場
「……」
「……」
春と蓮が無言のまま睨みあう。
「どけよ、後輩」
「あなたがどけばいいじゃないですか、先輩」
「先輩に対して口の聞き方がなってねぇんじゃねぇか」
「ここは実力主義ですよね。ってことは実力の劣る先輩がどくべきじゃないですか」
「言うじゃねぇか。後輩」
「……」
「……」
一触即発。
無言のまま、二人は睨み合うが、ため息一つ。蓮は頭をかくと、春の横を通り抜ける。
「お前は龍馬を意識しているようだが、お前が勝ち上がっても龍馬とあたることはねぇ。なぜなら水瀬龍馬は俺が倒すからな」
あの曲を奏でし君へ kenji @kenji7
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