　冷房の利いた大学附属図書館の自習室。学食と違って、利用者の会話も雑音も少ない落ち着いた空間である。

　そうしたくなる気持ちも分かる。

　分かるが。

「開始数分で突っ伏して寝るか、普通」

　同期の彼の発言に俺も同意した。

　試験対策のため、先輩たちから頂戴した過去問を四人で整理している最中だった。

　その過去問に顔を埋めて彼女は寝ていた。

　男性の前で寝るなという思いと、折角の寝顔がうつ伏せ状態で全く拝めない悔しさとが閲ぎ合う。

「昨晩、美術解説の動画を見ていたら、ほぼ徹夜になったらしくてな。寝かせてやれ」

　凄まじいドヤ顔で彼女の友人が言う。

「だからって過去問の上で寝んな！整理どうすんの」

　彼の悲鳴にやむなしと判断。

　起こそう。

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