第4話 路地裏の地球防衛隊
うさぎに連れられて、俺たちは繁華街の路地裏をウロウロ。
ぽてぽてとに足歩行するうさぎに、野良猫が「シャー!!」と、当然の権利を持って威嚇するが、「ごきげんよう! マダム!!」とにこやかにうさぎは猫に挨拶して全く動じていない。
地球防衛のためですから!!
そう強引に職員室で主張して、ラルフは俺たちの公休をもぎ取った。
先生たちは、人間の言葉で話しをするうさぎの姿にたじろいで、一言も言い返せなかった。「ああ……」「は、はぁ……」なんて相槌ともうめき声とも言えない声を発することだけで、担任の先生は精一杯だった。
「では、生徒をお借りします」
ラルフはそういい放って俺たちを連れてきたのだ。
ある意味交渉上手?
そして、ラルフに連れられた俺たちは、今路地裏を歩いているというわけだ。
「話のわかる聡明な先生で助かりました」
ラルフはご満悦だ。
スキップのように弾む足取り。
……まあ、うさぎだから、跳ねるのがデフォなのかもしれないが。
「地球防衛隊って、こんな細い路地の先にあるの?」
葉月が疑問を言葉にする。
「まあ、非営利団体ですし。予算は限られていますから」
もごもごと言い訳をするラルフ。
予算がない団体なんだ。
大丈夫なのか? ラルフは、その話は濁してはっきりさせないままで鼻歌を歌っているが、俺は知っている。
予算のない団体は、とても大変だということを。
去年俺の入っていた写真部は、予算が無さ過ぎて、現像液も許可性だった。
もちろんカメラもフィルムも自腹。
暗室は、カーテンがボロボロ過ぎて、穴をガムテープで塞いで凌いでいる状態。
デジタルも、パソコンもプリント代も言わずもがなで自腹。
あ、これ部活として活動する必要なくね?
そう思って、一ヶ月ほど在籍してその後は、幽霊部員を決め込んでしまった。
予算がなければ、通常の活動もままならなくなる。
そうなれば、成果なんてものは当然あがらず、人員も減る。
俺の入っていた写真部も、学校創立以来の歴史ある部活で、大昔には、コンテストで入賞なんて成果をあげた人もいたようだが。
俺の入った時には、見る影も無かった。
この薄汚い飲み屋のゴミ箱に囲まれた扉の向こうに地球防衛隊も、そういう類の団体ではないことを切に願う。
願うが……。
俺たちの前に現れた扉には、ガムテープが貼られ、その上に油性マジックで「NPO法人地球防衛隊」と決して綺麗とは言えない字で書かれている。
ガムテープの乱用には、悪い想い出しかない。
ほのかに光こもれる暗室が頭をよぎって消えた。
「さあ!! 入ってください!!」
ラルフがこの路地裏に似合わないような態度で俺たちのために扉を開けてくれる。
高級ホテルのドアマンを思わせるビシッと背中を真っ直ぐにした姿勢で、うやうやしくドアの後ろでラルフが控える。
中には、ガムテープで補強されたスリッパが、散乱していた。
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