RUN2 チュートリアル

少し?ばかり時間が経って僕は、スマホから視線を逸らして周囲を眺めた。


周りを走っていた人は、皆一様に立ち止まりスマホを眺めていた。


僕のそばにも、一人の女性が立っていた。


淡いピンクの上下のランニングウェアに、黒いタイツ。


後ろ手に長い黒髪を結った少女だった。


綺麗というよりも可愛いと言えるだろう。


でも、この子どこかで見たことがある気がする。


彼女を見ていると、彼女もまた僕の存在に気づいたらしく視線が合った。


横目で見るとわからなかったが正面から見たら、その子が知り合いだということに気づいた。


「相馬さん?」「登坂くん?」


僕らの声が合わさった。


彼女の名前は、相馬 春花。


そして、僕の名前は登坂 夏輝だ。


僕らの関係は、同じ部活で同級生というだけの関係だ。


「知ってる人が近くにいてよかった」

「それは確かに・・・でも、そうすると僕らは死んだってことだよな」

「う、たしかに・・・うーん、折角高校生になったのに」


そう、僕らはこの春に高校生になったばかりだった。


8月の夏休みになった今日。


僕らはここにきてしまったのだから高校生活は4ヶ月ほど・・・実質3ヶ月しか経っていないことになる。


スマートウォッチが、急に鳴動した。


「きゃっ」


相馬さんが、小さな悲鳴を上げる。


可愛い。


「相馬さん、スマートウォッチって普段使わないの?」

「あはは、そうなんだよね。なんか、慣れないのよね。これ」


僕は、手に持っていたスマホに視線を移す。


『ペアリング登録をしますか?』と出ていた。


「「ペアリング?」」


また、僕らの声が揃う。


どうやら、相馬さんも同じ表示が出ていたらしい。


「つまり、僕らがペアになるってことかな?」

「そう言うことなのかなぁ」

「あのさ、折角会えたんだし一緒に行く?」


彼女は、大きな目をして僕の顔を見ていた。


たぶん、この機会を失うと二度と相馬さんと会えなくなる気がしていた。


元々、僕は相馬さんの事が気になっていた。


「私でよかったら・・・えっと、末永くよろしく」


彼女は、スマホを触った。


「僕の方こそよろしくね」


僕もまたスマホのディスプレイを見る。


そして、『はい』を選択した。


スマートウォッチが、再び鳴動する。


相馬さんの肩がビクっとなったのが見えた。


今度は、声を上げなかったようだ。


スマートウォッチには、『ボーナスリワードを獲得しました』と表示されていた。


「相馬さ」

「待って、えっと、夏輝くん。

折角だから名前で呼び合お」

「じゃあ、そ・・・は、春花さん」

「えへへ、はい」


そう言って、満面の笑みを浮かべていた。


破壊力抜群の笑顔。


僕の心臓には、効果は抜群だ。


「春花さんは、キャラクリは?」

「私は、このまま行きたいかな・・・だめかな?」

「そんなことないよ、僕。

春花さんの事・・・そのさ、ずっと気になってたから」

「えっ」


僕がそう告げると、春花さんは顔を真っ赤にしていた。


それを見ると、僕の頬も熱くなった。


「えっと、えっと・・・実は、私も夏輝くんのこと気になってたの」

「そ、そっか・・・ならここで出会えてよかった。

二度と会えなくなるとこだったんだね」

「だから、出会えてよかった」


僕らは、どうやら両片思いだったようだ。


「じゃあ、僕もこのままいくよ」

「うん!」


後は、行先を決めなきゃいけないのか。


どんな、異世界ワールドがあるんだろう。

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