第265話 少年探偵団

 「みんな、集まってくれ。」


 俺の呼びかけに部室のみんながぞろぞろと集まってくる。


 「ぶちょーどうしたんですか?改まって。」


 「少年探偵団を作りたいと思う。」










 長い沈黙の空気が俺に圧をかける。


 え、間違ってないよな、俺たち中学生だし、待てよ、少年探偵団というと小学生探偵を指すのか?それなら中学生は中年探偵団、いやいやいや、それは流石に違うだろう。


 多少ナナメ上のところで俺の思考は迷走していた。



 エマさんが重い口を開ける。


 「部長、少年探偵団ってアニメの見過ぎではありませんか?」


 エマさんはここしばらくの俺の活躍を見て多分多少尊敬の念を持ってくれていたのだろう、いきなり笑い飛ばす暴挙は控えてくれた。


 「これは、探偵業の届出をする、ということなんだ。」


 エマさんは少し考えて疑問を口にする。


 「でも私たちはすでに捜査権限も与えられて銃も供与されているいわばですよね、いまさらの届け出をする意味がよくわからないのですが。」


 エマさんの疑問ももっともである。

 海斗と空斗は全く理解できず口を開けてポカンとしている。


 「そこなんだ、僕たちは確かに捜査権限を与えられているができるだけ隠密に動かなくてはならない、要はここぞという時以外身分を明かすことはできないんだ。これではいろんな活動をするにも動きづらい、そこでそれならいっそ少年探偵団という表の顔を持ってしまおうと、そういうわけだ。」


 「なるほど、私たちの活動は全て単なるの活動であると偽装するということですね。」


 あさひさんが腑に落ちたように発言する。


 「少年探偵団なら昔の名探偵小難こなんも有名だし、子供のお遊び風を装えるわけですか、犯人も油断させることができますね。」


 「ぶちょー少年探偵団カッコいいっすね。」


 「ぶちょー少年探偵団イケてますね。」


 海斗と空斗が調子を合わせる。


 「そういうことなら異論はないわ。」


 薫子が賛同してくれたので話は決まってしまった。


 「手続きはどうするのですか?」

 ひまりさんが尋ねる。


 「ああ、ここに必要書類が書いてある、近いうちに揃えて出してくれ、手続きは知り合いがいるんだ。」


 俺はすでに行政書士のクラフツマンマツウラさんに相談して必要書類を聞いて来ている、あとは揃えてマツウラさんに渡すだけなのだ。


 少年探偵団になるには


①探偵業開始届出書

②誓約書

③履歴書、俺たちは中学生だから簡単だ。

④親の同意書

⑤身分証明書、これは学生証とかではなく、本籍のある明石市役所で発行してもらう証明書である、破産して復権してないなどがないことを証明するものだ。

⑥住民票


これを明石警察署に提出すれば俺たちは晴れて少年探偵団を名乗ることができるのだ。


 

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