第257話 ハーバーランドデート
デートに行く服に悩んだ俺だったが、結局悩み疲れていつものジーンズに柄シャツ普段着を選んでしまった。
多分薫子も歩きやすいようにいつものシンプルなパンツにTシャツあたりで来るだろうし。
明石駅の改札口で約束の1時間も前に着いた俺は時間を持て余していた。
とりあえず缶コーヒーでも飲んどくか。
明石駅の一角にある七星コンビニで朝専用缶コーヒーを買った。
ちびちびコーヒーを啜りながら改札口を振り返ると遠くから歩いてくる2040年の流行色であるグリーンのアクセントが映えるワンピースを着た少女が目に入った。
まるで読モ雑誌から抜け出してきたような感じだった。
デート前の男子が他の子に見とれてしまったのがバレたら薫子の左ストレートが顔面に食い込むかもしれん。
俺は視線を反対側に向けてコーヒーを啜ることに専念することにした。
突然!
後ろから頭をヘッドロックされ攻撃を受けた。
しまった!敵か?
俺はセオリー通り姿勢を落として反転して敵に一発入れようと反転した。
そこにはさっきの読者モデル風の少女がいた。
チャコールのリボンのアクセントが入ったグリーンのワンピース、少し厚底のサンダル?
そして薄いグリーンのバッグを下げた薫子が至近距離にいた。
「うわ」
思わず俺は50センチばかり後方に飛んだ。
薫子はキョトンとしている。
「あーおい!どうしたの?そんなに慌てて。」
「いや、読モが!」
薫子はすこし顔を赤らめてこっちを見る。
「ど、どうかな?この服。」
「さっき遠目に、あ、読者モデルが明石にいる!、と思ってたとこ、薫子だったんだ。むちゃ似あってるよ!」
「そ、そう?この前みんなでお買い物行った時にエマが絶対似合うからって私に薦めてくれたやつなんだ。」
エマさん、GJ!
「うん、すごく可愛い。」
俺は心底そう思った。
「そうしたら行こうか。」
俺たち二人はJRに乗り、新快速で神戸に向かった。
神戸までは20分ほどだ。
座席はいっぱいなので俺と薫子はドアの近くに立つ。
「今日はいい天気ね。」
薫子は窓から海を見ている、俺は薫子に視線が釘付けだった。
程なくして新快速電車は神戸駅に到着した。
改札を出て右に曲がり駅を出ると地下に降りるエスカレーターがある。
「薫子、危ないから手を繋ごうか。」
一応デートなんだからデートらしいことをしないとね。
そんな言い訳を心の中でしながらグリーンのワンピースから伸びる白くて細い手を握った。
手を握るのは初めてでは無いが、普段のシンプルな服装と違う薫子と手を繋いでドギマギしている俺であった。
ショッピングモール「海へ」を抜けて渡り廊下を渡るとそこはハーバーランドである。
鼓型の赤い塔がいつものように鎮座している。
「海風気持ちいいわ。」
ワンパンマンミュージアムの隣に古びた観覧車があり、雲ひとつない青い空と海が広がっている。
「ねえ、暑いしとりあえずトルコアイス食べようか。」
「いいわね。」
壺プリンも捨てがたかったが伸びーるトルコアイスを二つ買って薫子に渡した。
「美味しい。」
薫子もお気に召したようだ。
ブラブラ歩きながら舐めた。
今日は夏休みの終わりということでカワサキワールドの横の公園ではキッチンカーがたくさん出ていて食べ比べイベントや大道芸などが行われている。
「ねえ、いろんなキッチンカーが出てるよ、お昼ご飯はあそこで食べようよ。」
「まだ来たばかりなのに気が早いわね、でも牛タン串とか美味しそう。」
薫子は見かけによらず肉食系のようだ。
「そうしたらお昼ご飯前に神戸港クルーズ船に乗ろうよ、俺も久しぶりなんだ。」
「いいわね、賛成。」
こうして楽しいデートが始まったのだが、まさかあんな事件に遭遇することになるとはこの時は夢にも思わなかった。
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