第256話 初デートのお誘い
「ねえ、
俺と薫子は生まれた時からずっと一緒であり、筋金入りの完璧な幼馴染である。
あまりにも距離が近すぎてデートと言ってもピンとこない、それが正直な感想だった。
しかし、思春期の男子としてはデート、の響きに少しドキドキしてしまうのだ。
「薫子、どうしたの?デート?なんて今更感たっぷりなんだけど、もちろんOKだけど、ていうか、理由を聞いても?」
「うーん、どうと言われても、なんというか、最近、蒼が遠い?そんな感じがして、もちろん毎日のように話すし、みんなと一緒にわいわいやってるから寂しいとかじゃないのよ。ああ、うち何言ってるんやろ。」
薫子は普段は標準語っぽいの話すことが多いけど(大人と話すことが多いからかな?)実はたまにこんな明石弁が出るんだ。
「そう言えばこの前三ノ宮に遊びに行ったって聞いたけど誰と行ったの?」
「ひ。ひとりでブラブラしてきたんだよ、たまにはね、そ、そんなこともあるだろ。」
「ふーん」
嘘は言ってない、オルガは人間じゃないし、浮気?(付き合ってるわけじゃないから浮気と言うのもおかしいが。)などではない。
もちろん薫子似の愛玩用美少女アンドロイド?の存在など話せるはずもない、たちまち「キモッ!」と冷ややかな目で見られるかも知れないしな。
薫子にいつものように心を読まれてもやましいところはひとつもない。
そう俺は自分に言い聞かせた。
「どこかに行きたいところとかあるの?」
「うん、木星の衛星のエウロパに行きたい!」
また突拍子のないことを口走るな、薫子は昔からこんなだったからもう驚かないけど。
「
世間様には真偽不明のおとぎ話のように広まっているけど、本人とその関係者から話を聞いている俺たちはそれが事実であることを知っている。なにせ、海兵隊も何人か水陸機動団として現地に入っているのだ、陸斗先輩も現地で戦闘を行っているという。疑う余地はなかった。
「エウロパの話は信じているけど今は夏休みデートの話だよね、ちょっと今行くのは無理かなー。」
薫子はいつもの飛躍しすぎたトンデモ発言をうっかりしたことに気がつき、すこし赤面する。
「そ、そうね、光速突破したロケットは実験用でまだ人は乗れないから無理よね。」
「エウロパに悪逆な隻眼のドラゴンがいて、そいつに捕まっていたマリアさんと,エンジニアのグエンさんが1000年越しに再開して結婚した素敵な話を聞いたの、グエンさんとマリアさん、1000年も思い合っていたなんて素敵だと思わない?」
俺は1000年という時間が想像もできなかったが、薫子を1000年思い続けることはなんとなくできるような気がした。
「それでは姫様、デート先はエウロパということでよろしいですかな?」
俺は片膝をついて右手を差し出して騎士の真似事をしてみた。
「もうー、蒼ったらそんなところに行けるわけないじゃないー。」
そう言うと薫子は手を取るどころか、いつものように俺にヘッドロックをかましてこめかみをグリグリしてきた。
あ、いつもの薫子だ。
俺はなすがままに抵抗せず身を任せた。
やっぱこう言うのがいいよな。
「そしたら明日朝9時、明石駅の改札前に集合な。」
「わかったわ。」
俺は薫子の社宅まで送って官舎に帰った。
明日のプラン、どうしようかな。
俺は「初デート?」のプラン作りでワクワクしていた。
「アオイ、楽しそうね。」
俺の様子を見てオルガが話しかけてくる。
「オルガ、ごめんよ、明日は部屋で大人しく留守番してもらえるかな。」
「イエス、アオイ。明日は薫子さんとデートなのねおすすめプラン作りましょうか?」
「ありがとう、でもとりあえず自分で作りたいんだ、困ったらまた頼むよ。」
「イエス、アオイ」
俺はスパイダーユニットを取り出してオルガに装置してやる、オルガは部屋のコンセントにトロリー線を挿入してエネルギー補給を行った。
俺はとりあえず明日着ていく服から悩むことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます