第254話 オルガとアオイの甘い休日

 昨日の夜は初任務成功祝勝会とやらで陽葵さんのお屋敷でお菓子とジュースのどんちゃん騒ぎをやった。


 さすがに疲れた俺は今日は一日のんびり過ごすことにした。


 「少しお疲れのようね、アオイ。」


 「ん、そうだな。でも本当の功労者はオルガなのにごめんな。」


 俺は皆にもオルガのことは内緒にしていた。

 もともとどこかの国の野良GSIのオルガ、存在が知られたら明石市に回収され廃棄処分される可能性もある。

 それにこの一見薫子似の美少女フィギュアにしか見えないオルガを見られたら、エマさんあたりから「キモっ!」と言われてひなさんやひまりさんあたりにドン引きされる可能性もある。とてもみんなに話す気にはなれなかった。


 とりあえずスパイダーユニットは普段は取り外してしまっておくことにした。

 これなら最悪美少女フィギュアだと言い張れなくもない。


 ただ、半裸に近いこの姿はさすがに色んな意味でまずいかもしれない。


 「ところでオルガ、その額のツノは隠せないのかい?」

 オルガには転スラの「シオン」のような立派なツノが生えている。見た目は悪くないのだが、カバンやポケットに隠すときに引っかかったりチクチク刺さったりする。


 「これはGPSの電波やその他通信波を受信するために必要なものです、アオイは嫌いですか?」


 「それなら仕方ないか、でもあちこち引っかかったりして破損しないか心配で。」


 「そうですね、野良の時には気になりませんでしたが、アオイの側にいるなら少し形状を考えますね、破損すればスパイダーユニットで修復はできますが、仕様変更となれば時間がかかるかもしれません。」


 それにしてもとりあえず服だな。

 オリジナルの半裸フィギュア姿は、やはりいろんな意味でまずい、リカちゃんの服とかだろうか、手作り、、、ひまりさんあたりなら作ってくれるかもしれないがみんなには内緒だしな。


 フィギュアや人形の服など縁のなかった俺は途方に暮れてしまった。

 アマゾンなどで見ても1/6サイズなどは多そうだけど、オルガは多分1/16サイズくらいか、手のひらサイズだからな。


 とりあえず店を回ってみるか。


 「オルガ、君はどんなドレスが好きなんだ?」


 「ワタシのドレスですか?多分好みはアオイと同じだと思いますけど。」


 そりゃそうか、俺と同期してるもんな。


 「オルガ、窮屈かもしれないが、バッグに隠れていてくれるか?」


 「イエス、アオイ」


 そういうと、オルガは頭からバタバタしてバッグに潜り込んでいった、指でお尻を押して手伝ってやった。青少年には少しドキドキするところだ。


 明石にはその類のショップはなかったので元町、三ノ宮あたりまで足を伸ばす。


 おもちゃや、フィギュアショップ、ドールハウスなどの店もあったがやっぱりちょうど良さそうなものは見つからなかった。

 そうこうしているうちにお昼になってしまった。


 オルガがバッグからちょこんと顔を出して言う。「アオイ、お腹空きましたわ。」


 「そうかもうそんな時間なんだな。」

 

 三ノ宮の街中にはもう何体ものアンドロイドが活動していて普通にアンドロイド用のエナジードリンクショップがある。その一つに入ってみる。

 「あの、この子のエナジードリンクってありますか?」


 カバンからオルガが顔を出した。


 「おや、珍しい型の愛玩用アンドロイドだね、それならこのマイクロチューブ入りエナジードリンクでいいかな、6パック入りで6000円だよ。」


 「はい、では一万円札で。」

 俺は渋沢栄一の印刷されたお札をお尻のポケットから財布を取り出して支払う。


 「おや、渋沢栄一久しぶりに見たわ、最近はペイ払いが多いしな、ちょっと待ってくれ、釣り銭出すの久しぶりやから。」


 年代物の手提げ金庫を取り出すと中から銀色の札挟みに挟まれた北里柴三郎の印刷された1000円札4枚を引っ張り出してくれた。


 「そういえばおっちゃん、愛玩用アンドロイドとか言ってたけど、そういうのは結構出回ってるの?」


 「おお、そのサイズならそこそこ見るぞ、最近人気だよな。でも確か安いやつで100万円くらいするからお前さんみたいな中学生が持ってるのは珍しいかな、どっかの坊ちゃんなのかい?」


 「いえ、俺、プロのGSIハンターなんで。そこそこ稼いでます。」


 「もしかしてお前さん『冒険者アオイ』なのかい?この界隈じゃ有名人だぜ。」


 俺の名前は三ノ宮まで轟いているのか、、


 「は、はい、そうです。恐縮です。」


 「そうだ、それならモトコーの5丁目に行ってみな、ショップマツウラという店があるんだが愛玩用アンドロイドの制作と改造、関連商品も豊富に置いてるぜ、金はちとかかるがそこの大将は腕利だ、お前さんなら大丈夫だろう。趣味の着せ替え衣装とかもあるみたいだからな、その子もハダカじゃ味気ないだろう。」


 「おっちゃん、ありがとう!行ってみるよ。」


 「オルガ、待たせたね、はい、エナジードリンク。」

 「アオイ、ありがとうご馳走になるわ。」

 俺の肩にちょこんと座ったオルガにエナジードリンクを一つ渡すと両手で掴んで口からちゅうちゅう吸い始めた。

 これもなんか可愛い。


 服とかもあるんだ、ショップマツウラ、なかなか使えそうだな。


 俺はオルガの着せ替えを想像してワクワクしてきた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る