第253話 急襲、制圧

 俺たちは八木平磯公園で落ち合った。


 俺,薫子、エマさん、陽葵さん、あさひさんが揃った。神崎ひまりさんは別働隊だ。


 「部長!海斗空斗が見つかったって本当ですか?」

 「ああ、偶然発見したんだが自動車解体工場の跡地の廃屋に縛られている。今から急襲しよう思う。敵は男二人だけのようだ、仲間が来る前に二人を救出したいと思う。出入り口は二箇所、二手に別れて踏み込もう。俺は正面から踏み込む、エマさんは薫子たち4人で裏口を押さえてくれ。」

 「わかったわ、部長は一人で大丈夫なの?」


 「俺を誰だと思ってるんだ?」 


 「わかったわ、部長!お任せします!」


 なんだかカッコつけた言葉がペラペラ出てしまったが大丈夫か?オレ。

 自分でも驚いていた。


 エマさんたち4人が拳銃を手に工場の裏手に回る。


 それを確認した俺は拳銃H&Kを構えて正面からゆっくり入って行った。

 

 「"Hey! Kayo diyan! Huwag kang sumalungat! Ibalibas ang mga armas at sumuko!"」《「おい!お前たち!抵抗するな!武器を捨てて投降しろ!」》


 俺は習ったこともない言葉が自然に出て自分でもびっくりした。おそらく支配下の野良GSIが捉えた音声をオルガ本体が判別したのだろう。

 まあそんなものだろう、と思うことにした。


 俺が一人になるとドローンモードのオルガが俺の肩に着陸する。

 俺はポケットからスパイダーユニットを取り出した。


 「オルガ、物陰から工場に侵入して海斗と空斗を縛っているローブを切断してくれ、頼む。」


 「イエス!アオイ」


 オルガはスパイダーユニットと合体すると音も立てずに工場の中に消えた。


 投降を呼びかけたのだが中からは反応がない、いきなりタガログ語で呼びかけられて困惑しているようだ。


 俺は拳銃を構えたままジリジリと中に入る。

 「"Kayo ay napapaligiran. Ibinibigay ang baril at sumuko o kami ay paputok."」《「お前たちは包囲されている。諦めて銃を捨てて投降せよさもなくば銃を撃つ。」》


 もう一度警告を行って中へ入った。


 突然男が殴りかかってきた。


 俺は体術でかわし、一本背負いで投げ飛ばす。

 いきなり殴りかかるということは銃は持っていないのだろう。

 俺は空に向かって一発発射する。


 俺が中学生くらいなのでおもちゃか何かと思っていたのだろう。

 驚愕の表情をしてあとずさる。


 もう一人の大男が海斗空斗の腕を掴もうとしたが、ロープはすでにオルガによって切断されている。

 逆に海斗空斗が大男に反撃を加える。

 しかしこれは二人がかりでも相手にならなかった、恐るべき怪力である。


 「アオイ!海岸線から5人の新手!」

 オルガから警告が入る、こちらからは銃撃を受けた。

 俺たちは銃弾をかわして物陰に隠れる。


 エマさんたちが裏口から突入して援護射撃をしてくれる。


 二人の男は仲間の方に走って逃げた。 

 

 「みんな追わなくていい!」

 俺は全員に指示を出す。

 海斗空斗を回収できたんだ、深追いは無用だ。


 7人の男?たちは俺たちが追ってこないのを確認して海岸線方面に逃走した。


 「海斗!空斗!助けが遅くなってごめんよ。」俺はとりあえず謝っておいた、なにせ朝まで俺も行方不明?だったので多少後ろめたいのだ。


 「ぶちょー!助けに来てくれると信じてましたよ!」


 「ぶちょー!あなたならやってくれると思ってました。」


 海斗空斗は思ってもいなかったことをペラペラしゃべったが、今日の別人のような部長には本当にそう思っていた。


 「部長、あの連中、取り逃してよかったのですか?」エマさんが聞いてくる。


 「あとのことは陽葵ひまりさんにお任せして我々は廃工場を家宅捜索しよう。」


 俺たちは廃工場の事務所を捜索し、大量の咳止め薬の瓶を押収した。

 

 後で分析した結果だがこの瓶は正規のものではなく質の悪い薬品が詰められ外国で作られた模造品であった。

 

 今回は英語教師失踪とは関係なかったようだが、こうして我がミス研の初任務は大成功を収めた。


 ****


 「"Lintik! Sino ang mga batang may hawak na baril na 'yan?"」《「ちくしょう!あいつら一体何者なんだ!」》


 7人はクルーザーに乗り込み離岸したその時。


 待ち構えていた海上自衛軍のイージス艦2隻に進路を阻まれた。


 「"Bakit may hukbo para sa mga tulad natin na walang halaga! Lintik! Tara, hindi marunong magmaneuver ang kalaban, daanan natin at tayo'y tumakas."」《「何で俺たちみたいな小物に軍隊が出てくるんだ!ちくしょう!おい、相手は小回りがきかない、間をすり抜けて逃げるんだ。」》


 クルーザーが向きを変えかけたその瞬間、突然海中から鉄の怪物が浮上してその二本ののアームでクルーザーのへ先をがっちり掴み、バリバリとめり込ませた。

 それは神崎重工のロゴがついた海中海上作業用モビルアーマーであった。

 もちろんオペレーターは神崎陽葵ひまりである。


 こうして逃げた7人は海上自衛軍に捕縛されたのである。

 クルーザーからも偽造風邪薬が大量に押収されたのは言うまでもないだろう。


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