第242話 ミス研捜査会議

 「今わかっていることを共有するわね、その上で方針と最終目標を決めましょ。」


 エマ・藤原1尉が話し始めた。


 「今回の中学生連続変死事件は謎が多いの。」


 エマは一呼吸置いてから続けた。


 「まず、薬の入手経路よ。」

 「二人の生徒の部屋からは数十を超える数の空き瓶や箱が見つかったの、警察も半径10キロ以内の薬局薬店を調べたけど販売数に不審な点はなかったの、あとは半径10キロを超える地域でいちいち目立たないように一個ずつ買い回るしかないのだけれど、二人の生徒は授業にもちゃんと出席していたし、それだけの数を短期間に手に入れることは不可能なのよ。」


 エマさんはうーん、と考え込んだ。


 「二つ目はオーバードーズがどの程度中学生に広まっているか、これも警察の捜査では何も出てこなくて行き詰まっているの。」


 中学生の陰のネットワークはわかりにくく表に出てこない、警察が手を尽くしても何も出てこないのだ。

 生半可な調査では尻尾を出すとも思えない。


 「3つ目の謎は、二人の亡くなった生徒がこと、市販品なんだから瓶でも空箱でも普通に捨てることができるわ、それをなぜのか、普通じゃありえないわ。」


 謎は深まるばかりである。


 「どちらにしてもまずは周辺の関係者の聞き込みをするしかないわね。」


 そう言うと、エマ2尉は陸斗3佐、内閣情報局から供与された7つ道具を大きなバッグから取り出した。


 ①内閣情報局員である身分証明書、東村内閣総理大臣と法務大臣のサイン入りだ。

 これは拳銃及びナイフの所持及び使用許可証も兼ねている。


 ②厚生労働大臣のサイン入りの 

「NARCOTICS AGENT」表記の麻薬取締官の身分証明書。

 今回は薬物が絡むためこちらを別に用意した、これなら内閣情報局員と知られずに活動ができる。


 ③護身用制式銃、警察のものではなく、自衛官の制式拳銃、ヘッケラー&コッホ(H&K)SFP9だ。


 ④小型発信機。

 スマホの位置情報はもちろんだが、念のために別の小型発信機を身につけておくのはセオリーである。


 ⑤簡易な薬物検査キット。

 これは令和10年に開発されたもので、先端のセンサーに水溶液を垂らすと5分ほどで麻薬成分を判定できるというもの。

 小さな体温計サイズになっている。


 ⑥これも令和10年に開発された防弾、防刃ベスト。

 アラミド繊維の5倍の強度を誇り、トレーナーレベルの薄さ軽さを備えている。


 ⑦コンパクトな中にニッパー等の7つの工具を内蔵したツール。


 以上が8人への供与品である。


 ところで読者諸氏には13歳の子供に対してここまでの装備を供与することに違和感を感じる方もいるであろう。

 しかしよく考えて欲しい。

 2040年台には日本の人口は7000万人にまで減り、社会のインフラをまともに回すには優秀な14歳15歳の人材は飛び級させてでも実社会、実戦投入しなければ回らないところまで来ているのだ。

 また、犯罪者の立場から考えてほしい。

 周りの子供が麻薬捜査官、警察、自衛官であるかもしれない、と思わせることは犯罪抑止の上でも効果が高い。

 どこで子供に見られているかもわからないからだ。

 世界大戦で働き盛りの若者が多く戦死もしている。

 10代前半の能力が飛び抜けた子供も戦力としなければならない事情もあるのだ。

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