第240話 赤い彗星と初任務
「ちくしょう!あともう少しだったんだがな。」
蒼は本気で悔しがっていた。
実はあのとき、陸斗から思いがけない提案があった。
「もうすぐ夏休みだろう?陸上自衛軍の訓練施設に合宿に来ないか?まあ、ちょっとしたサバイバルゲームが楽しめる上に護身術も身につくというスグレモノだよ。」
これに、ミステリー研究部の活動予定に困っていた蒼が飛びついたのである。
他の7人のメンバーも3食昼寝とお菓子付きという条件に飛びついた。
この時代、お菓子というのはそのくらい高級品なのであった。
「それでも敵を制圧寸前まで追い込んだのは良かったよ、それと平蒼くん、側方から接近する
「実は俺、野良のGSI狩りは得意なんです。」※一応プロです、
教官の陸斗先輩に褒められて蒼は少しいい気分だった。
「それにしても陽葵さんとあさひさん、実戦経験でもあるの?すごい動きだったけど、」
蒼は素直に聞いてみた。
「ええ、まあ少しね。」
二人は言葉を濁したが、そうなんだ、実戦経験あるんだ。
「薫子も百発百中だったけど。」
「ワタシは相手の次の動きが読めるから。」
そうだった、薫子はそういう奴だった。
「神崎
ひまりさんは少し照れながら。
「お母さまから操縦の仕方教えてもらったの少しだけ。」
「へ、へえー、お母さんから教えてもらったんだ。」
まあ、男女共同参画の時代だしおかしくはないんだが。
「お母様というと神崎すみれさんですか?」
陸斗が尋ねる。
「は、はい。」
「ああ。」
皆納得である。
業界では有名な「赤い彗星」と呼ばれる薙刀持ちモビルアーマー乗りの神崎すみれ女史だった。
****
一週間の訓練期間、もとい、合宿期間も無事に終了した最終日の夜、ささやかなパーティーが催されていた。
お菓子争奪戦からのパーティーも盛り上がりを見せて楽しい夏休み合宿だった。
「ちょっとみんなー、集まって、陸斗さんからお話があるから。」
エマ・藤原さんがミス研のみんなを集合させる。完全に部長の俺は空気扱いされているようだ。
「実は日本政府の内閣情報局から正式に君たちに依頼をしたい極秘任務がある。」
思いもかけない言葉に一同はシーン、と静まり返った。
「これまで秘密にしていたがここにいるエマ・藤原と諸星海斗、諸星空斗は内閣情報局のエージェントなんだ、こちらは一等陸尉のエマ・藤原、そしてそれぞれ準尉の諸星海斗準尉、空斗準尉だ、ただ、今回の任務は教師や教育長まで容疑者となっている難しい事件であるから年少のこの3人に任されている、しかし3人では限界がある、信頼できる友人の協力が不可欠なんだ、そこでこのミス研部員に白羽の矢が立ったと言うことだ、受けてもらえないだろうか。」
「やるわ!面白そうじゃ無い。」
薫子が嬉々として即答する。
「薫子さんがやるなら私も参加させてもらいます。」
川嵜
「陽葵様が参加されるならもちろんわたしも参加です。」
山王あさひさんも即答し。
「もちろんワタシも参加するわ。」
神崎
「じゃあ全員受けてくれるのね、ありがとう。」
エマさんが嬉しそうた薫子に抱きつく。
「そうか、みんなありがとう、内閣情報局にはそう伝えておく、後日護身用の武器と許可証を供与する、軍属を証明する身分証も同時に渡すことにする、新学期が始まる前までには用意できると思う、精細は追って指示する。」※ベテラン読者の方はご存知だろうが、先の世界大戦中に成立した戦時内閣によって時限立法の有事法案が成立し、超法規的措置も内閣の閣議決定のみで可能となっている。
陸斗が敬礼すると三人が敬礼で返す。
そして陸斗3佐は退出して行った。
モブオブ雑魚アンド、エアークラブプレジデントの俺は出る幕もなく強制参加となってしまった。
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