第239話 なんでこんなことに。

 新入部員歓迎会の盛り上がりが最高潮に達しようとした時に思いがけない訪問者があった。


 「よお!盛り上がってるかい!」


 それは海斗と空斗の兄、諸星陸斗もろぼしりくとだった。


 「にいちゃん!いらっしゃい。中学校に来るなんて珍しいね!」


 「あ、陸斗さん、」

 陽葵が少し赤い顔をする。

 恋人、ではないのだが、陸斗と陽葵はある事情で全裸で一つの布団に包まり、口付けもした仲である。

 もちろん二人だけの秘密であり、ベテラン読者の方以外、他に知るものはいない。

 (第189話〜192話参照)


 「陸斗さん、今日はどうしてこちらへ?」

 エマ・藤原は内閣情報部に在籍する陸斗の直属の部下に当たるが、その事実はまだみなには明かされていない。


 「うん、ちょっと野暮用でね、いや、前にエマさんから相談されていた件だから野暮用、はないか。」

 

 「それでは少し席を移して話しますか?」


 「いや、ここにいるみんなに話したいことがあるんだ。」

 

****


 部長の蒼をはじめとするミステリー研究部の8人は銃弾じゅうだんの嵐の中にいた。


 瓦礫がれきの中のコンクリートの柱に隠れて応戦おうせんするが、敵の銃弾は容赦なく撃ち込まれてくる。

 もうかれこれ3日ほどは家に帰れていない、まあ、母は長期航海中だし心配してくれる人は誰もいないのだが。


 それにしても、エマさんや海斗空斗はともかく、陽葵ひなさんやあさひさんの動きの早さ、銃撃の正確さ、体力、精神力はとても素人に思えない、何があったんだ。


 俺はふと気配を感じ、斜め後ろ上方にGSIを視認する。

 いつものように懐から銀のフォークを取り出して投げ、命中させる。こちらの情報を敵に見られては不利になるからだ。

 俺の唯一の特技が役に立った。


 「皆さん!前進します。」


 神崎陽葵ひまりさんがすこししたモビルアーマーを展開てんかいして敵の制圧せいあつに動く。

 神崎重工かんざきじゅうこう製の作業ロボットの汎用性はんようせいを高めた初期のモビルスーツ型武器である。

 

 ひまりさんが瓦礫がれきを押し倒して銃弾よけにしてくれた。


 「GO!GO!GO」


 俺はガラではないが、ここの部隊長ということにされている。

 7人の命を預かるんだ、タイミングを逃すことはできない。

 躊躇ちゅうちょなく前進のコールを、叫んだ。


 全員で生き残るために。


 敵を制圧した!

 そう思った時に頭に銃を突きつけられた。


 「平蒼クン、ちょっと詰めが甘かったね。」

 冷ややかな声でそう言うと、陸斗は引き金を引いた。

 ****

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