第237話 どうしてこうなった。

 放課後、突然だが、我がミステリー研究部のメンバーが6人増えて8人となった。

 どうしてこうなった。


 蒼は呆けていた。


 明石市立航空宇宙大学附属中学校ミステリー研究部(有閑帰宅部)のメンバー


 平蒼(本編の主人公)

 薫子・エバンス(蒼の幼馴染で幽霊部員、蒼が好き、かどうかは不明)

 川嵜陽葵(薫子が好き)

 神崎陽葵(川嵜陽葵の親友)

 山王あさひ(川嵜陽葵が好き)

 エマ・藤原(薫子が好き)

 諸星海斗(エマの手下)

 諸星空斗(エマの手下)


 もちろんモブオブ雑魚の主人公、蒼はカッコ内の事情は知らない。


 このメンバー構成そのものが蒼にとっては最大のミステリーであった。


 「ねえ部長!これからどうするの〜?」


 エマさんが理科室のテーブルに左手の肘を立てて手のひらの上にアゴを乗せて聞いてくる。


 いつまでも呆けているわけにもいかなそうだ。


 状況を整理しよう。


 結局、陽葵さんは13歳にして新制度の医師免許を取得した天才外科医で、中学校に通いながら午後は医学部附属病院で働くらしい。


 薫子がいるならと、陽葵さんがミステリー研究部に入部した。


 そして陽葵ひなさんの親友の神崎陽葵ひまりさんは陽葵さんがいるならと入部。


 山王あさひさんも陽葵ひなさんがいるならと入部。


 エマ・藤原さんは薫子がいるなら入部したがったが、実際には俺しか部室にいないので入部をためらっていた。

 しかしライバルが入部したことでそれどころではないと手下の諸星空斗と海斗を引き連れて入部したようだ。


 とりあえず意味わからん。


 蒼にとってミステリーそのものであった。


 これまでの活動は実質蒼一人だったから適当に暇つぶしをして薫子を迎えに行って帰るだけの有閑帰宅部であった。


 何をするの?と突然言われてもすることは


 言い切って見せても意味ないが。


 せめて薫子と陽葵さんがいてくれたらなんとでもなるだろうが、ここでは部長の俺だけがなのだから。


 薫子は夕方まで研究室に籠るだろうし、医師の陽葵さんは医学部附属病院で缶詰めである。


 どうするの?

 むしろ俺が聞きたいところだった。


 「と、とりあえず武術のトレーニングでもやろうか、あんな事件があったことだし。」


 「あの、ワタシ武術ぶじゅつとか無理なんでお人形作ってもいいですか?」


 神崎陽葵ひまりさんはそう言ってニードルフェルトアートを始める。


 「ワタシも事務作業ならできますけど武術とかはちょっと、会計帳簿かいけいちょうぼとか活動記録かつどうきろくの整理やりましょうか?」


 山王さんのうあさひさんが申し出てくれる。


 はい!帳簿も活動記録簿もアリマセン!


 学園からかなりの額の活動費が支払われているが、蒼は自分の口座に入れっぱなしで、たまに薫子と買い食いするのに使っていた。

 完全にアウトのやつである。


 あさひさんに事情を耳打ちすると、あさひさんは深いため息と共に帳簿を作り始めた。


 仕方ないのでエマ・藤原さんと乱取りを始める。


 格闘術には自信のあった蒼であったが、ものの数秒でエマさんに制圧されてしまった。


 横で見ていた海斗と空斗が顔を見合わせる。


 全くポンコツの部長、蒼であった。

 

 

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