第234話 転校生H

 その日の午後、授業が始まる前に松坂先生が教室に来た。


 「朝は別の手続きがあって紹介できなかったけど転校生がまだいるのよ、びっくりでしょ。それも、あの潜水艦を作ってる大企業の財閥のご令嬢なのよ、さあ入ってちょうだい。」


 今度こそ間違いない。

 もう椅子をグラグラしても後ろにコケることがないのは確定した。


 俺は調子に乗ってまた小学生のように後ろにグラグラした。

 俺たちが陽菜が入ってくるのを待っていると扉が開き、黒髪の少女、少女、しょ、



 「誰⁈」


 不覚にも俺はまたそのまま後ろにドテンと転倒してしまった。


 「こら!平蒼たいらあおい!またお前か!ふざけるんじゃない!と言いましたよね。」



 「紹介するわね、こちらは神崎陽葵かんざきひまりさん、あの神崎重工の会長さんのお孫さんです、仲良くしてあげてくださいね。」


 黒板に書かれた名前。


 「神崎陽葵」


 名前の漢字が一緒じゃないか!


 陽葵ひなさんが変化したのか?

 それとも朝に見た陽葵さんが幻影だったのか?

 俺は線状降水帯のように降り注ぐミステリーにどうかなりそうだった。


 結局その日は陽葵に会うことはできなかった。


 

 「あら、ひなちゃんからLINE来てるわ、今日は附属病院で足止めされたから明日から来るって、残念ね。」


 「薫子、陽葵さん、病院ってどこか具合悪いのか?」


 「そうじゃないみたいよ、まあ明日また話を、聞きましょ。」


 俺は何とも言えない嫌な感じが拭えなかった。

 そう、何か事件が起こる時にこんな感じがするんだ、昔からそうなんだ。

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