第230話 消えた死体

 昨日の殺人事件、中学生のモブオブ雑魚の俺は何度も110番しなきゃと思いながらも警察に通報できないでいた。

 そもそも警察に言うにはここの設備のことも言わなくてはならない。

 それに通報したとわかったらあの殺人鬼が俺を狙ってくるかもしれない。


 恐怖心や面倒ごとが嫌という正義心も勇気もない俺は自然発覚するのを待つことに決めた。

 多少良心が痛んだ。



****


 ところが。

 翌日。


 「おはよう!」


 「おはよう。」


 同級生たちは普通に挨拶をしてくる。

 

 「なんや、元気ないやないか?薫子ちゃんに張り倒されて後ろに三回転半でもしたのか?」


 海斗、空斗兄弟が普通に声をかけてくる。


 「あ、ああ、俺はいつも通りだ、何か変わったことはなかったか?」


 「変わったこと?変なやつだな、そういえば空斗が古い牛乳勿体無いって飲んで腹下したくらいか。」


 「ボケ海斗!いらんこと言うな!」



 「そうか、大事件やな、、」


 俺は今朝のNHKニュースは見たし神戸新聞も読んだ、動画ニュースにも殺人事件のことは載っていなかった。

 

 授業が始まる前に見覚えのあるにも恐る恐る行ってみたのだが、血液は拭き取られたのか何の痕跡も残っていなかった、鑑識でも来ればルミノール反応が出るだろうが、モブオブ雑魚の俺がどうこうできることではない。

 てしまったのである。

 

 中学校の先生に聞いてみようかとも思ったが、死体の痕跡こんせきもないこの状態で話しても誰にも信じてもらえないだろうし、信じてもらえたとしたらじいちゃんの怪しい施設のことも話さなければならないだろう。


 何より中学校の校舎の中で起きた殺人事件である。


 GSIからの画像では顔は確認できなかったが、学校関係者である可能性も高いのだ。


 もし俺が嗅ぎ回っていることが殺人鬼に知れたら次に始末されるのは俺、と言うことになる。

 とても教師に相談する気にはなれなかった。


 しかし、明らかにしなければ俺はずっとこの消えることのない黒点のような恐怖感と共に3年間暮らすことになる。


 先生や警察以外で誰かに相談するとなると、こんなことを相談できるのはあの部の部員くらいしかない。


 つまり中学校のミステリー研究部である。



 「ダメやん。」_| ̄|○


 その部長の蒼は頭を抱えた。


 

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