第228話 芳裕じいちゃんの謎
俺には
父さんは漁師を継がず、海上自衛軍に入る道を選んだが、漁師を継いでいれば殉職することもなかったのかもしれない。
そんなじいちゃんも最近は気が向いた時だけお客さんをタコ漁などに案内する以外は呑気にブラブラ飲み遊び歩いて何日か帰ってこないこともあるようだ。
そんなじいちゃんにも謎がある。
それは父さんが亡くなってすぐくらいの俺が小学生の時だった。
いつものようにじいちゃんのところに遊びに行ったが不在だったので漁師小屋の探検に潜り込み、「ぷりぷりエビカニ」や「アルファタックル海人」などを漁っていたのだが、ふと板張りの床を見るといつも置いてあった木箱がなく、扉のようなものがあった。
何だろうと思って持ち上げてみると地下に降りるコンクリート製の階段があった。
子供の探険心に火がついた俺は怖いもの見たさで恐る恐る階段を降りる。
その奥には。
漁師のものとは思えない複雑なモニターや装置がところ狭しと並んでいる。
スピーカーからかすかに聞こえてくるのはロシア語だった。
これは8つ目のミステリー認定してもいいだろう。
ばあちゃんが死んでから芳裕じいちゃんのところにはプ連のロシア人女性がたまに遊びにくるようになった。
小学生の俺も何度か会ったことがあり、日常会話程度のロシア語も教えてもらった。
最初に覚えたのは「
だからその時はアマチュア無線か何かだと思っていた。
ただ、GSIを狩るようになってからは認識が変わった。
今思えばあれはプ連製の通信機器だったような気がする、表示がロシア語(ウクライナ語かヘルモーズ語かもしれないが)だったからだ。
世界大戦ではプ連は敵国だった。
人種で偏見を持ってはいけないことは理解しているが、もうこなくなったあの優しいロシア人女性も敵国の人間だったのだ。
今となっては少し恐ろしいものを見てしまった気がしてじいちゃんには聞くに聞けない状態であるが悪いと思いながらじいちゃんが不在の時に内緒でこの設備を勝手に使っている。
なぜか?
少年の夢、エッチなことに使えるからだ。
まあ、さすがに最近は控えているが。
俺も大人になったものだ。
「じいちゃん!いる?」
「おう、蒼か、じいちゃん、目と腰と肩が痛くてもう死ぬかもしれんからしばらく漁に出られないんじゃ。」
「はいはい、ちゃんと部屋片付けて酒ばっかり飲まずにちゃんと食べてな。」
最近はこんな調子である。
もしかしたらじいちゃんはロシアのスパイであのロシア人の女の人は連絡員だったのか?
そんな妄想をしていた少年時代が懐かしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます