大文字伝子が行く150

クライングフリーマン

3人の大文字伝子

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署生活安全2課勤務。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士。伝子に時々「クソババア」言われる。学を「婿殿」と呼ぶ。

 須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 森淳子・・・元依田のアパートの大家さん。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。伝子と一時付き合っていた。警視庁副総監直属の警部。色んな部署に配置されていたが、今はEITO準隊員扱いである。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 新町あかり巡査・・・丸髷署生活安全課からEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁からEITO出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁からEITO出向。

 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。警視庁から出向の特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当の事務官。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。一般事務官。

 高峰くるみ・・・みちるの姉。スーパー回転勤務。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友の妻であった同級生逢坂栞と結婚した。

 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。EITOとの連携部署の為、犯人逮捕連行に向かうことが多い。



 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午前11時。伝子のマンション。

 伝子と高遠は、Linenで物部とテレビ電話をしていた。横に、なぎさがちょこんと座っている。

「あれ?一佐は昨夜、お泊まり?新婚さんのお邪魔をしちゃダメじゃないか。」と、物部が言うと、「なぎさはイケない子?マスター。」と、なぎさは甘えた声で言った。

「なかなかの演技だな。福本に推薦しておくよ。祥子ちゃんの代役出来るかも知れない、って。」

「ありがとうございます。」と、なぎさは舌を出した。

「今言ってた話。頷けるよ。大文字達が殆ど連勝なのは、『意外性』だ。アドリブも含めてな。奴らには、それが想定出来ない。あのChotGPTとやらもな。想定しにくいだろうな。」

 物部の指摘に、「そうですよ、副部長。データを元にしているから、答が間違っていることもあり得ます。色んな面で意外性柔軟性が必要です。」と高遠は応えた。

「本郷さんの弟さんも、早速活躍か。もう体は万全なのか?大文字。」

「うん。三ヶ月に1度、定期健診はあるがな。どんどん発明して貰うさ。」

「それで、宝石店強盗、何も盗ってないのか?」「私をおびき出す為の罠だったのさ。他にも目的があったのかも知れないがな。」

「それで、DDバッジと長波ホイッスルか。改良版はいつ出来るんだ?」

「3日。それがギリギリの線らしいです。その間に敵の作戦がないことを祈るばかりです。」

「そろそろ、客が入りだした。じゃ。」物部との通信は終った。

「ふうん。いつもこんな調子なの?おにいさま。」「うん。副部長は『聞き上手』だからね。話している内に考えがまとまるんだ。さあ、昼食準備。」と、高遠は台所に立った。

「お待遠様。」と言って、森が入って来た。

 森は焼きそば用のそばを4人分持って来た。パジャマのままだった伝子となぎさは寝室に着替えに戻った。

「違和感ないわねえ、藤井さんが言ってたけど、なぎさちゃん、本当の家族みたいよ。」と森が言うと、「そうでしょ。伝子の『妹たち』で一番家族っぽい。一ノ瀬さんとろが嫁入り先で、ここが実家みたい。」

 4人で食事を始めると、チャイムが鳴った。

 高遠が出ると、高峰くるみと、店長だった。

「あ。店長さんまで。いつもお世話になっております。」「それは、こちらの台詞ですよ。今度から、お隣の分も注文頂けるとか。お怪我されて入院されているとか。」

「そうなんです。退院後の話だし、本人が注文しますけど。予め連絡をしておいた方がいいと思いまして。退院されたら、改めて連絡致します。」「よろしくお願いします。」

 配達した品物を置き、2人は帰って行った。「準備万端ね。」と、森は笑った。

「ねえ。あのスーパーさあ。1年の内に2回も名前変わったの、知ってる?高遠さん、大文字さん。」「そうなのか。私は、くるみのスーパーって、普段言ってるから。」

 伝子の言葉に、「中小企業は大変なんだよ、伝子。まだ、コロニーの痛手から立ち直っていない企業だってある。多分、何かのげんかつぎで名前変えたんだよね。」と高遠は森に言った。

「その通り。店売りだけでなく上得意周りするのは、あの店長さんが以前銀行マンだったからって聞いたわ。この家は間違いなく上得意だしね。」

「ふうん。そうだ、伝子。みちるちゃんって、両親亡くなった時、ひとりぼっちになったって、以前話してなかった?」

「ああ。何故くるみという姉がいるか?答は簡単だ。養女だ。くるみの両親も交通事故で亡くなった。署長の知り合いだったし、不憫だったし、みちるも塞ぎ込んだし、で、くるみを白藤家の養女にした。養子実子の義理の姉妹って、普通親のどちらかが再婚しているが、このケースは違う。署長がサンタになって、姉をプレゼントしたのさ。」

「みちるちゃんが、タダの我が儘娘じゃないのは、くるみさんの影響なんだね。」と、高遠は感心した。

「じゃ、私は部屋の整理に行くわ。『お楽しみ』の邪魔ばかりも出来ないしね。

 森が帰ると、伝子は玄関の施錠をし、服を脱ぎ始めた。

 高遠が驚いていると、「『お楽しみ』しよう。」と、伝子は高遠の手を引き、寝室へと向かった。

 高遠は、頭の中で洗濯物の心配をしていた。

 午後5時。『一試合』終えて、高遠は洗濯物を取り入れていた。

 EITOのアラームが鳴った。EITO用のPCが起動し、理事官がディスプレイに映っている。

「夕飯はお預けだ、大文字君。国会図書館がやられた。」「火事ですか。」「いや、書物だ。知っての通り、国内のあらゆる出版物のバックアップというべき書物があるが、国宝級の書物もある。催涙弾が撃ち込まれ、白昼堂々と盗んで行きやがった。実は、総理の意向で、書物の幾つかに追跡装置がしこんである。」

「ミッション・インポッシブルですか。」「既にオスプレイが向かっている。」

「映画みたいね。」と、入って来た森が言った。

 午後5時。オスプレイ1号機の中。

 ジョーンズがEITO本部に連絡している。

「こちらオスプレイ1号機。ジョーンズ。FBI仕様のGPS信号を正確に捉えています。どうやら、群馬県方面に向かっているようです。」

 午後5時。オスプレイ2号機の中。

 EITO本部から通信が入った。理事官の声が聞こえる。

「オスプレイ1号機から連絡が入った。どうやら敵は群馬県に向かったようだ。大文字君を本部に降ろしたら、本部組を乗せて、群馬に向かってくれ。」

「こちらオスプレイ2号機。高木。了解しました。」

 午後5時。EITO本部。司令室。

「流石、FBIですね。総理が発注したんですか?」と草薙が理事官に尋ねた。

「うむ。極秘事項だが、米軍を通じて調達したらしい。3つのケースには、戦前のフィルムも含まれている。だからこそ、だ。」

「詰まり、戦時中、米軍機が撮影した記録フィルムもある、ということですか。戦時中の映像は公開されたのはごく一部だと聞いていますが、国会図書館所蔵でしたか。私はてっきり、NHKの所管かと。」と、渡が言った。

「敵の狙いは、機密文書よりむしろ、そのフィルムだろう。アジトまでは、金の延べ棒クラスの安全な運搬をするだろうな。」と、夏目が言った。

 午後6時半。群馬県。赤城山。オートキャンプ場。

 広大な土地に、沢山のキャンピングカーと乗用車が並んでいる。

 入って来たワゴン車から、数人の男達が現れた。

 男達は、バンガローから出てきた一団と合流した。

「お疲れさん。」と、頭上から声がして、リーダーは、その陰に叫んだ。

「この声に聞き覚えはないのか?」とその声は言った。

 リーダーの隣の男が声紋分析器を取り出した。

「来る途中で火災事故を起した、フェイクの車の消火は、すぐに終るだろう。」

 リーダーの男の隣の男は頷いた。

 ジープの屋根から地上に降りた伝子は高らかに言った。

「つどえ、正義の名のもとに。たたけ、悪の息の根を。我ら、EITO、エマージェンシーガールズ!!」

 オー、という雄叫びの元に、拳銃や機関銃を構えた男達に、増田、結城、馬越、伊知地が突進し、間近で水流弾を撃った。水流弾とは、蘭なる水鉄砲ではなく、発車後グミ状に変化する水を弾にしている。

 小坂と下條が発煙筒を投げた。

 馬場が操縦するホバーバイクにあかりが乗り、シューターを投げ始めた。シューターとは、うろこ形の手裏剣で先端に痺れ薬が塗ってある。

 筒井が操縦するホバーバイクに金森が乗り、2つのブーメランを銃で構える相手に投げた。

 青山が操縦するホバーバイクにあつこが乗り、大ぶりのブーメランを投げた。

 ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、戦闘や運搬用に利用している。

 キャンピングカーやバンガローから、男達が武装して出て来た。

 一旦退いた四人のエマージェンシーガールズに、江南、工藤、飯星、葉月、越後、大町が戦闘に加わり、ジープから降りて移動した、田坂、安藤、静音が矢を放ち、援軍の男達の武器を落した。小坂も下條も他の者に習ってバトルスティックで闘った。

 様子を見ていたリーダーと、サブリーダーらしき男の背後から、伝子の声が聞こえた。

「お前らは『見学』か?」ぎょっとして振り返ったサブリーダーらしき男が声紋分析器のスイッチを押すと、『大文字伝子』という文字がその機械のディスプレイに映った。

 少し離れた所から、稲森が鞭で、その機械を離れた。

 声の主である日向は、「どうかしたか?」と、笑った。

 やがて、サイレンの音が聞こえる頃、リーダー達以外は、地面から暗くなった夜空を見ていた。

 警官隊と共にやって来た、みちるは、リーダー達に金蹴りを食らわせた。

「心配ない。手加減をしておいた。」と、みちるは言い放った。

 リーダーは「EITOが暴力振るっていいのか?」と、文句を言った。

「目が悪いの?エマージェンシーガール、『今の』私は、どんな格好?」とみちるは日向や稲森に尋ねた。

「女性警察官。」と、2人は揃って答えた。

「家宅侵入罪プラス強盗罪プラス殺人未遂罪プラス器物破損罪プラス公務執行妨害罪。スピード違反は後で確認ね。」みちるは、愛宕にウインクした。

 呆れた愛宕と橋爪警部補は速やかに、警官隊に逮捕連行させた。

 女性警察官姿のみちるのイヤリングに、声が聞こえた。「白藤。明日、懲罰会議な。」

 斉藤理事官の声だった。警察官は通常イヤリングやネックレス等は身に着けない。

 みちるは、エマージェンシーガールズ用のイヤリングをそっと外し、近寄って来た、あつこに渡した。

「お仕置き部屋、復活します?おねえさま。」あつこは、取り出したガラケーに語った。

 午後8時。EITO本部。司令室。

「理事官がなあ、みちるには書類仕事16時間与えるのがいい、って言っている。」

 草薙と河野と渡、そして、なぎさが笑いを堪えている。夏目警視正は、わざとよそ見をした。

 午後8時。伝子のマンション。

 高遠と森が、大笑いをしていた。

「一件落着、ね。」と森は言った。何だか臭った気がした。

 2人が確認すると、ぜんざいが焦げていた。

 ―完―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大文字伝子が行く150 クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ