第12話 メッセージがややこしい!
「はぁ~~~」
一限目が終わったところで、俺は深い深い溜め息をつく。
これからまだ午前、午後と授業が続いていくのだと考えるだけで、またどっと疲れが圧し掛かってくるようだった。
理由は言うまでもなく、最近の俺を取り巻く環境の変化のせいである。
今朝から優、木島さん、そして大滝さんという美少女三人に振り回されるというのは、思った以上に体力を使うのだ。
「どうした、朝から疲れてんな」
「色々あるんだよ……」
「ふーん。色々、な」
疲れた俺に翔太が声をかけてくれるが、理由は察しがついているのだろう。
まぁ頑張れよというように、同情の笑みを浮かべてくれている。
同じ教室にいる、優、木島さん、そして大滝さんの美少女三人。
彼女達は、クラスを飛び越えて学年の中でも美少女として名の通っている程のこの学校における有名人。
そんな三人と関係を持てるというのは、客観的に見れば羨まれる状況なのだろう。
しかし実態は三者三様で、それぞれが中々に濃い個性を持っているのだ。
何でこんなことになっているのか、未だに自分でもよく分からないなと思いつつ、俺は翔太と他愛のない会話をしながら何気なくポケットから取り出したスマホに目を向ける。
するとそこには、一件のメッセージが届いていた。
――ん? こんな時間に誰だ?
気になって確認すると、それはまさかの優からのメッセージだった。
優とは今朝連絡先を交換したばかりなだけに、いきなり送られてきたそのメッセージが気になった俺はすぐに開いてみる。
『亮は、加賀美くんとだけ仲良くしていればいいと思います!』
「はぁ?」
しかし、初めてのそのメッセージは、全くもって意味不明なものだった。
翔太とだけ仲良くしていればいいとか、一体何について言われているのか意味が分からな過ぎて、俺は思わず声をあげてしまう。
「ん? 今度はどうした?」
そんな俺に、今度は何だと楽しむように翔太が聞いてくる。
しかし、意味不明ではあるが翔太の名前が出てきている以上、ここでこのメッセージを見せるのも違うように思う。
「……いや、何でもない」
「そうか。まぁ、そういうことにしといてやるよ」
「何だよ、その含んだ言い方は?」
「何だよって、それは嬉しそうな自分に聞いてみな」
そう言葉を残して、翔太は笑いながら自分の席へと戻っていく。
――嬉しそう? 俺が……?
何でだよと思いつつも、そこでようやく俺も自分の口角が上がっていたことを自覚する。
――つまり俺は、優からのメッセージが嬉しかったってこと、か?
理由はそれしかないし、そう考えるとすんなりと腑に落ちている自分がいた。
今朝連絡先を交換した、幼馴染からのメッセージ。
内容こそ意味不明ではあるが、長年距離が空いてしまっていた相手なのだ。
それはやっぱり、嬉しいことなのだ。
後ろを振り向けば、そこには相変わらずいつもの女子達と会話をしている優の姿。
いつも本当に仲がいいよなと思っていると、優も俺の視線に気が付いたようだ。
心なしか、少しだけ嬉しそうな表情を見せた気がする。
だがすぐに思い出すように、俺に向かって指で小さくバッテンを作って向けてくる。
恐らくそれは、さっきのメッセージと関係しているのだろうが、やっぱり意味は分からない。
でも、そんなやり取りができていることはやっぱり嬉しくて、気づけばまた口角の上がってしまっている自分がいるのであった。
このラブコメは、ややこしい!! こりんさん@コミカライズ2巻5/9発売 @korinsan
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