9話:ウイ ~もう一人の赤羽~
「とりあえず、
「え、また後で追及されるの?」と不満の声を上げる「胸揉み犯」の勇者。
そんな彼――否、“彼女”を、
場所は変わらず
ベッドの上に
そして勇者に正座を指示した
「それで、お前が女ってのはどういうことだ? 何でわざわざ男装なんかしてやがった」
「ふむ。その理由を語る前に、まずはボクの名前を明かしておこう」
「名前? そういや“勇者”って職業名みたいなもんか……」
「あぁ、
「……ん?」
意表を突かれた。
異世界人の名前なんて、日本人の
実際、『ウイ・F・ウリエル』という名前も「ふ~ん」くらいにしか思わなかったが、『
たまたま同じ苗字という可能性もあったが、この場においてはその方があり得ない話であり、更に勇者はこんな爆弾を放り込む。
「
「……は?」
「それも、血の繋がっていない妹だ」
「……は?」
――――――――
――――
――
―
勇者は――勇者:
『今から11年前の夏、ボクの母親と
シングルマザーだった勇者:
幼い
最初こそ
まだ幼く“性”の意識も薄い為か、2人が仲良くなるまでに大した時間は必要なく、気が付けば親友の様な兄妹となっていた。
しかし、新しい日常は突然崩壊する。
両親の再婚から1年も経たずに『
地球史に残るその天変地異は、近くの神社で遊んでいた2人を巻き込んだ。
結果として、
そして
―
――
――――
――――――――
「じゃあ何だ……俺は、自分の妹のことをずっと忘れていたのか……?」
既にこの話を知っていた
「父さんと母さんは、どうしてこの事を黙ってたんだ? 何故、俺に
「隠してたんじゃないの、
興奮気味な
その手の柔らかさに、温かさに、
「“コレ”はボクもあとで知ったことだけど、地球最初の『開門』で異世界に転移してしまった者は、その存在を“星から忘れ去られる”んだ。人々の記憶から消えるだけじゃない、紙媒体や電子情報を含め、全ての情報が地球から消え去るのさ」
「そんな……何だよそれ……」
「勿論、“今”は違うよ。地球から異世界に転移しても、誰からも存在を忘れ去られることは無い。でも、最初の『開門』は違った。だから両親達がボクのことを知らないのも、
最後は寂しげな顔で、既に諦めはついたと言わんばかりの
それからすぐに表情を戻し、彼女は続けて語る。
異世界に飛ばされた後の話を、地球に戻って来た経緯を。
「かくして異世界に転移したボクは、地球に戻る手段をアレコレと模索した。そして勇者になれば、文化交流の一環として地球に行けることがわかったんだ。だけどボクは絶望したよ。勇者は“男にしか許されない職業”だったからね」
「まさか、それで男装してたのか」
「あぁ。全ては
「俺が忘れた、幼い頃の約束……?」
「そうだよ。大人になったら結婚すると、ボク等はそう誓い合っていたんだ」
「へ?」「えッ!?」
呆気に取られる
どうやらこの話は彼女も初耳だったようで、慌てて
正座していた
その衝撃で
「あぁああああ~~ッ!?」
夜中に響く、御近所迷惑が過ぎる
彼女の発狂を止める為、
――――――――――――――――
*あとがき
次が【序章】最終話です。
次話のあとがきには【1章】で登場するヒロインのデザイン画も載せています。
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